あの日、ひぃおばあちゃんが亡くなった。
雪が間もなく降ってきそうな、クリスマス前。
老衰だった。

私はまだ14歳。
部活終わり、いつものように母が迎えに来てくれた。
車に乗ると母が一言。「今日の夜はすき焼きだよ」
平日のど真ん中の日なのに、なんて豪華なと中学生ながらに思った。
「今日、何の日だっけ?」私が母に聞くと、「ひぃおばぁちゃんが亡くなった」その一言だけ言い、向かった先はお通夜会場。
心臓の音が聞こえてしまうのではないかと思うくらい、バクバクした。

◎          ◎

幼い頃から両親が共働きだったので、ひぃおばぁちゃんに面倒を見てもらっていた。
その頃のひぃおばぁちゃんは、まだ1人で歩けて1人でご飯も食べれた。
1人で出来ることがたくさんあったけれど、私が年を重ねて成長していく毎に、ひぃおばぁちゃんが出来ることは減っていった。
戦争の話を聞いたり、昔ながらの遊びを教えてもらったり、外で遊んだり、ご飯を食べたり、お昼寝をしたり、本当に楽しかった。

祖母がデイサービスを利用しながら自宅介護をしていたけれど、病気で入退院を繰り返しているうちに完全に施設に入居することになった。
面会も好きな時に行けたので、祖母について頻繁に面会に行った。
私が行くといつもニコニコ笑顔を見せてくれた。

始めのうちは施設内の人とコミュニケーションを取っていたひぃおばぁちゃんだけれど、段々と「家に帰りたい」と言うようになった。
面会に行っても、横になっていることが増え、どんどん衰弱していくのが目に見えてわかった。

◎          ◎

ある日の事、ひぃおばぁちゃんが間もなくかもしれないという連絡が来た。
そろそろなのかと何となく心の準備もした。
1週間、2週間経っても、ひぃおばぁちゃんは驚異の生命力を遂げた。
もうすぐひぃおばぁちゃんの誕生日だったので、ショートケーキを持って面会に行った。
たわいもない会話をしながら食べたケーキ。
「冷たい冷たい」と言いながら目に涙を浮かべていたひぃおばぁちゃん。
いつも通り、またねの握手をした。
それが一緒に過ごした最後の時間だった。

その次に会ったのは冷たくなって眠っているひぃおばぁちゃんだった。
すぐ駆け寄って、手を握ったけれど力強く握り返してこなかった。
あぁ。本当に亡くなったんだと初めて実感した。
御飯は喉を通らなかった。
悔いのないくらい最後までたくさんの時間を過ごしたのに、もっと会いたかったと後悔した。

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この季節が近づくと、私の名前を呼んで夢に出てくるひぃおばぁちゃん。
大丈夫。忘れてないよ。いつも思い出すよ。
あのね、生活していて、力が欲しいとき「よいよい(あだ名)力を貸してください」なんて心の中で唱えているんだよ。聞こえているかな?
これからも、おまじないのようにパワーを頂戴ね。

いつまでも、いつまでも、忘れないからね。