私がまだ大学生だったとき、実家暮らしだったため、旅行に行くときは、家族や友達など絶対に誰かと一緒であった。
しかし大学4年生の卒業間近の冬のある日、私は思い立って京都への一人旅を決行した。
10年に一度の寒波が来ている今、一歩踏み出した経験として、同じくらい寒いと感じた日の初めての一人旅について綴りたい。
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京都へ行くのは初めてではなかったが、王道の京都観光がしたくなり、一番最初に思いついた金閣寺をメインの目的地に決めた。
雪が積もった金閣寺を写真で見たことがあり、この時期であれば自分も見られるかもと密かに期待していた。
旅行当日は、雪こそ降っていなかったが、外気がジーンズに染み込んでくるような、とても寒い日であったことを覚えている。
私はもともと引っ込み思案な性格のため、誰彼構わずに話しかけることができない。
今回の一人旅を通して、引っ込み思案なところを何度か再確認する機会があった。
まず、駅で電車を降りたらバス停が何箇所かあり、自力で金閣寺方面のバス停を探し当てた。
バスの乗り方は地域によって違うため、京都は先に IC カードをタッチするパターンなのか、はたまた料金が均一で前払いパターンなのか、それとも後払いパターンなのかをバス停でバスを待ちながら検索した覚えがある。
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降りるバス停も、もちろん何度も地図アプリを見て確認した。
その時はまだ外国人観光客がたくさん訪日していた時期であったので、私の他にも3グループほど同じバス停で降りてほっとしたことを覚えている。
外国人観光客に混じって、並ぶ列は合っているのかキョロキョロして、挙動不審になりながら参拝料を支払った。
そして門をくぐり、池の前に立つと、2月の柔らかな午後の日差しを浴びた金閣寺がお目見えした。
金閣寺の名に相応しく、まさに黄金の光を反射していて、とても神々しいものを見ている気分になり、心が洗われた。
写真を撮り合う人々に混ざりながら、自撮りをしたのだが、その当時はとても恥ずかしかった。
勇気が出せず、誰かに声をかけて写真を撮ってもらうことができなかったため、仕方がなく自撮りをしたが、これも一人旅の醍醐味なのかなと思う。
金閣寺の他にも有名どころを観光したが、最初に行った金閣寺が一番鮮明に印象に残っている。
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初めての一人旅は緊張の連続であったが、親元を離れ一人暮らしをしている今では一人行動は当たり前になっている。
しかし、一人旅をしたときの旅先でのドキドキワクワクといった感情は、今でも覚えているし、達成感のような充実感を得た特別な経験になった。
一人暮らしをしていても、コロナ禍というのもあり、出張以外では一人旅はしていないことに気づいた。
友達や家族と賑やかに旅をする方が楽しいのではないかと思って、一歩が踏み出せない自分がいるのも事実である。
初めての一人旅で引っ込み思案の自分を再認識したように、新たな自分を発見するために、もう一度あの不思議な高揚感を味わうために、一人旅をしてみてもいいかもしれない。