文章を書くということ。それは私にとって小さな頃から苦手としていること。
でも小学校から大学3年生の現在まで、文章を書くということから逃れることはできなかった。

授業の感想を書く簡単なコメントペーパーから期末課題のような数千字以上書かなければならない長文のレポートまで……。特に授業の感想は自分の思ったこと、学んだこと、なんでも好きなことを自由に書けばいいはずなのに、いつもどうしてもペンが進まない。
授業を聞いていなかったわけでも、無理していいことを書こうとしているわけでもないのに、どうしても人の倍ぐらい時間がかかってしまう。

きっと直感的に感じていることはたくさんあるのに、それを噛み砕いて自分の言葉にするのが苦手なんだ。

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そんな私でも、文章を書くことで成し遂げた思い出がある。それは、高校2年生の夏休み課題の読書感想文。
私は、文章を書くことだけでなく、読書もあまり得意ではない。なぜなら、読んでいても内容を理解するのにどうしても時間がかかってしまったり、集中力が途切れてしまうと話が分からなくなってしまったりしてしまい、すごく時間がかかってしまうからだ。

しかし、夏休み課題なので本を読み切り、感想文を書かなくてはならない……。私には一番荷の重い課題だったが、ひと夏かけて向き合うことにした。

いくつかある課題図書から私が選んだのは、看護師さんが実際に経験した患者さんとのお話がまとめられたエッセイ本だ。

別に将来医療系に進みたいわけでもなかったけれど、私はその本を選んだ。なぜかというと、その時期に私の父が病気で入院していて、お見舞いにいくと看護師さんに会ってお話する機会があったから。患者の家族という私自身の経験も重ねて読むことができそうだと思い、迷わずその本に決めた。

当時、父は入退院を繰り返していて、私も病院にお見舞いに行くことが多かった。
看護師さんたちは、患者本人だけでなく家族である私にもいつも話しかけてくれて、入院している患者のお世話や処置をするだけではないことに気づいた。たくさん入院している患者さんがいて、さらにお見舞いにくるその親族がいて、忙しい中でもいつも温かく接してくれてすごいと思った。

父の状態が不安定になっていって、私も不安になっていた時でも、看護師さんが、「大丈夫だよ」と言ってくれると本当にどうにかよくなるのではないかと思うことができた。

最期まで温かくて優しい看護師さん達に父を看てもらえて本当によかった。喪失感でなかなか現実を受け入れられなかったが、私はそう思えることができた。

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夏休みの終わりごろ、本を読み終えて私は読書感想文に取りかかった。
やっぱりいつものようにペンはなかなか進まなかったが、本のあらすじと私の経験した出来事と感じたことをそのまま原稿用紙にぶつけてなんとか完成させることができた。

夏休みが終わり、課題のことも忘れかけていた秋頃。先生から私の書いた読書感想文が県のコンクールに出品され、入賞したことを聞いた。
賞を取ろうと思って書いたわけでは全くなかったので、私はとても驚いた。あれこれ難しいことを考えずに自分の素直に感じたことをそのまま文章にしたのがよかったのだろうか。

他の人からしたら、些細でちっぽけなことかもしれないけれど、これが高2の夏に経験した文章を書くことで成し遂げた大切な思い出だ。