キーケース、ポーチ、文房具をサンリオキャラクターズでまとめて、職場の人とサンリオの最新情報を必死に追って、キティちゃんの柄が載っているかわいい赤色のボールペンを眺めている私は、ときどき、サンリオが大嫌いだった自分のことを思い出す。

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幼い頃から『女の子なんだから』と言われてきた私は、太っていて、ショートヘアーで、言葉遣いも荒っぽくて、活発で、『かわいい』からかけ離れた女の子だった。
自分にとって自分が女の子であること、女の子でいることを求められることがとてもとても苦しく、反発するようにたった一人でもがき続けていたのだ。周りが望む女の子でいられない、そんな自分のことを自分でも好きになれなかった。

サンリオは、私の人生にいつも現れた。リボンを付けたねこの女の子。ハート柄にピンク色。サンリオといえば『かわいい』。私にとってサンリオは「女の子なんだから、あなたも私たちみたいにかわいくないと」と言われてるような気持ちがしていた。あなたもそんなことを言うの?私はサンリオが大嫌いだった。

いわゆる細くて、可憐で、髪も長くて、おしとやかな口調な私。今の私は太っていて、ショートヘアで、活発で、荒っぽい口調の私。本当の私はどっちなんだろう。どっちであるべきなんだろう。その後もサンリオグッズは何度も私の人生に現れ、私に振り払われていった。

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私が大学生の頃、サンリオ内で『はぴだんぶい』というグループができた。けろけろけろっぴやバッドばつ丸など、なんとなく知っているキャラクターがチームを組んでいた。
町中でよくグッズを見かけるようになったのと、なんとなくキャラクターを知っていたことで、電車を待っている間の時間潰しになんとなく『はぴだんぶい』を検索した。すると、『はぴだんぶい』がどんな思いでできたグループなのかが書かれていた。

彼らはかつて人気があったが、今は人気が落ちてしまったキャラクターたちだ。
「自分にスポットライトが当たらない時期も自分らしさを大切にして、着実に人気を取り戻しつつある彼らだからこそ、自分はいまのままでいいのか悩み不安を抱える人へ、ハッピーを届けることができるはず」(アニメージュ+から引用)

私は、ただサンリオの男の子のキャラがまとまってるだけだと思っていた。この言葉は衝撃で、気づけばサンリオのことをどんどん調べていった。電車を何本も見送り、私はサンリオに没頭した。

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サンリオという会社はギフトの会社として生まれたこと。創業者の方が戦争を経験していて、もう二度とこんな思いはしたくない、目の前の人を大事にする気持ちがあれば二度とこんなことは起こらないと強く感じたこと。だから目の前の人に大事に思っていることを伝えるためにギフトの会社を作ったこと。

戦争が終わり、人形やおもちゃが流行りだし、「かわいい」という、人の気持ちに余暇を与えるものがこれからの時代に求められる。だから実用的で役に立つものは作らないと決めていること。「かわいい」にこだわった理由は、かっこいいやオシャレは人によって価値観が異なるが、赤ちゃんや子犬を見てかわいいと思う気持ちは世界共通だから。その気持ちがきっかけで人との心の距離の最初の一歩を縮められるから。

さらに、SDGsをほとんどの会社は提示から数年経ってやっとうちも取り組んでます!と書面で済ましているのに対して、キティちゃんのYouTubeチャンネルで「どんな思いでこの目標を作ったのか」をすぐにスイスの国連まで行って担当の方にインタビューをしたこと。日本はどう取り組んでいるかを聞きに河野外務大臣にもハローキティとしてインタビューをしたこと。そしてそれをまるまる英語に変換して海外の人も同じように動画を観られるようにしたこと。
そして、サンリオが毎月出している新聞「いちご新聞」の最初のページでは、かわいいキャラクターでいっぱいの中で戦争の話を必ずしていること。

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「みんななかよく」と、企業理念はその一言。サンリオは「かわいい」を手段にしているだけだ。
私は何も知らなかった。サンリオのことを何も知らなかったのだ。
「あなたもかわいくいなさい」なんて始めから言っていなかった。私は何も知らなかった。

「あなたはあなたのままでいいんだよ」と、太っていて、ショートヘアで、荒っぽい口調で、かわいくない私の背中をそっと押してくれている。初めて私の人生に現れたときから、サンリオはずっとそうだったのだ。私が嫌気がさしてサンリオを振り払っていたときも、ずっとサンリオは私の人生のそばにいてくれた。

周りに求められる可愛い女の子像、そしてそれとかけ離れている私。本当の私はどっちなんだろう。どっちでいるべきなんだろう。サンリオはずっと言い続けていたのに。
「あなたはあなたのままでいいんだよ」

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今日もお守りのようにキティちゃんの赤いペンを持って職場を駆け回る。「サンリオだ!かわいい!」子どものそんな声を聞いて私は「かわいいでしょ!お姉ちゃんサンリオが大好きなんだよ」と笑う。
なんでもないという顔をして、サンリオはこれからも私の人生に、そしてあなたの人生に現れ続けるだろう。