どうやら私と彼の結婚は、私が仕事を辞めるか辞めないかで決まるらしい。
そりゃそうだ。遠距離恋愛なのだから、どちらかが仕事を辞め、どちらかが住む街へ行かないと同居ができない。
別に同居ができずとも結婚はできるが、「結婚するなら同居を」という考えは両家一致しているので仕方がない。
それは飲み込む。一旦ね。まあ、分からんでもないからだ。
が、何故、その「どちらか」が私だということが既に決定しているのだろうか。
悪いが、そんな話し合いが行われた覚えがない。

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彼の仕事は資格が無いとできない。
一方で私の仕事に資格はいらないし、どこの会社でもできるからであろうか?
だが、転職の際、資格を持っている人のほうが有利だと思う。
彼の仕事がより学術的で高尚だからだろうか?
それとも、ずっと目指していた職業についているのは彼のほうだからだろうか?

きっと、どれも違う。
勿論、それらは全く違うわけではないだろう。
どの理由も、彼より私の方が仕事を辞めるべき理由ではあるかもしれないが、最大の理由ではない。
最大の理由は、私が女性だからだ。

「仕事を辞め、家庭に入れ」と言われているわけではない。私が、結婚をしても仕事を続けたいと言えば、彼も彼のご家族も応援をしてくれるに違いない。
今の仕事を続けなくてもいいでしょ。別に働くならパートでもいいんだし、正社員で働きたいなら転職活動をして彼の住む街にある会社で仕事をすればいいと、彼や彼のご家族に言われたわけではない。これは、今働いている会社の先輩に言われた。別の先輩にも、上司にも言われた。
はっきりと言葉にはしないが、彼や彼のご家族からも、この考え方を感じる。

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私は今の会社が好きだ。とは言っても、特別思い入れがあるわけではないし、スキルアップのために転職でもしようかと考えていた時期だって正直あった。
私は朝が弱いので早起きが苦痛だ。パートならもう少し朝の時間をゆっくりと過ごせるだろうなと何度も思った。

でも、納得いかない。
何故、遠距離恋愛のカップルが結婚をする時、女性が今の会社を辞めて男性の住む街に移ることが当然なのか。

年功序列が強い弊社は、働き続ければ出世もしやすい。毎月、目標を追いかけてやっとの思いで契約をとる。辛いとたまに弱音を吐きながらも、私は自分の仕事に誇りを持っているし、会社の人間関係も好きだ。
彼もきっとそうだろう。私と同じくらい、仕事に誇りを持っているはずだ。
ならば、まず「どちらか」が私になるのか、彼になるのか、話し合われるべきなのではないか。

大体、私も私だ。
何故私は働き続けることをいちいち相談し、応援されようとしているのだろう。彼は私に相談せずとも働き続ける。男性である彼側の理解がなければ女性の私は働けない。どこかでそう考えてしまっている。

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仕事をしたくない女性と、私のような仕事をしたい女性がいる。女性は結婚をすれば、仕事を辞めるという選択肢を選ぶことができる。
結婚しても男性は仕事を辞めるという選択肢は無い。働き続ける。嫌でも。

この考え方は、ジェンダーについて考える世の中に変わりつつあるなかで、幾分か柔軟になってきているはず。しかし、まだまだ世の中には、うっすらでも残っていると思う。
この男女差に関しては、どちらかというと女性に優しい考え方かもしれない。否が応でも働かなければならないとされている男性のほうが不満を言いたいに違いない。

分かる、分かる。男性、女性である前に、私達は人間なんだから。仕事は男女関係なく、嫌な時は嫌だし、辞めたい人は辞めたいよね。だからさ、同じ人間として、男性、女性っていうのは置いておいて、どちらが仕事を辞めるかの話し合いはしようよと、私は言いたい。
とにかく私が彼に言いたいことはそれだけだ。
それが言えなくて頭を悩ませている。