「どうします、この関係(笑)」と、夜中の3時にベッドに寝っ転がりながら電話しているスマホの向こうから、そう言われる。
電話している相手は、もう何年の仲になるのだろうか。7年くらいになるだろうか。
毎日のように会うかと思えば、途端に会わなくなったり。
連絡は唐突に。
でも昨日も話してたっけ?ってくらいナチュラルに始まる。
阿吽の呼吸のように周りに夫婦なの?とつっこまれるくらい、タイミング、波長が合うのは確かだ。
だけど一線は超えない。さしで飲んでも、さしで遊んでも夜はバイバイ。そう決めてた。

好きなアーティストに顔も声も背格好も似てる。
空気感、波長も心地が良い。
惚れない訳がない。
好き。だけど付き合えない。
わかっている。
だからずっと仲の良い友達でいたかった。

◎          ◎

なのに、「ねーねー。貸したい本があるからさ、夜桜見ながらお散歩しよ」。
数か月ぶりにきたLINEとは思えない軽さ。
厄年なのだろうかってくらい色んな不幸が続き、もう人生どうにでもなれくらい私が崩壊してた時の誘い。
気分転換に誘いにのった。
久々に会う彼との時間は、楽しいというより心がすんと軽くなる。
コンビニで缶ビール買って、ブランコしながら桜を眺めて。懐メロを口ずさんで。
近況報告してたら、「珍しいじゃん。終電なくなったよ」「うちくる?」。
いつもならタクシーでも近くのホテルでも使って彼の家には泊まらない。
なのに、「そうさせてもらおうかな」。
なぜかこの日は自分の軸がブレブレだ。

歯車がここから1個ずつおかしくなる。
そこから、彼の家に何度も泊まった。何度も身体を重ねたし、カフェ巡りしたり、家で映画見たり、ご飯一緒に作ったり。していることは誰がどう見たってカップルだ。
だけど、お互い知っている。
付き合えない。
そんな関係が続いて2年が経過した。

◎          ◎

「この関係どうします?(笑)」
「こんなに好きなのに付き合ってくれないんだもんな」
冗談交じりに彼は言う。
いつもなら流すけど。
「終わらせないと」。そう思った。
寂しさの埋め合わせで彼を使っていた。
だけど付き合う気は私の中で、ない。

一線を越えて、仲が深まるたびに会うたびに、お互いの求めるものが強くなった。
「ねーねー、仕事辞めて主婦になったら?」
「えー、俺より友達と遊ぶんだ(笑)」
付き合ったら自分だけを見てほしい彼と、付き合っても仕事も続けたいし、友達ともたまには遊びたい私。
好きだけど、1番譲れない部分がずれる。

「好きだけど。無理だよ。うまくいかないの分かるでしょ。ごめん。終わりにしよう」
言ったとたん涙であふれた。
スマホ越しの彼も泣いてる。
「もー。泣かしたー。振られたー」
冗談交じりに泣きながら彼は言う。
「2年間幸せだったな。ほんとに終わるの?」
そう言われると走馬灯のように2年間が頭の中で再生された。
終わらしたくないよ。けど、「無理だよ」「ありがとう。私も幸せだった」。
そう言うと、「とか言ってまた明日も電話してたりして」「しないよー」。
そんな風に会話している間にお互い電話が切れず、電話を繋げたまま寝落ちした。
朝起きた時にはスマホの電源は切れていた。

◎          ◎

それから連絡をすることはなくなったが、桜を見ると彼を思い出すし、コンビニの缶ビール買うたび思い出す。一緒に作った料理は多すぎるし、何するにも彼の顔が脳裏をよぎる。

そのたびに、元気でいるかなとは思う。けど連絡しようとは思わない。
けれど、感謝の気持ちと幸せであってほしいとは願う。
きっと今でも私は彼が好きだ。ずっと彼には恋しているだろう。アイドルを追っかけるように。

私には今、結婚を考えているパートナーがいる。
パートナーのことは愛している。
彼のことは好きだけど、彼は恋だったとわかる。
今のパートナーは愛だ。
けれど私は彼との2年間が無ければ愛と恋が分からなかったと思う。
ありがとう。