「これが僕の本望です」これは、初めて告白されたメールの最後の一文。中学を卒業し、高校の入学を待つ春休みのこと。

私は中学で、初めて好きな人ができた。告白された彼とは違う人。好きだった。だけど、恋のライバルはたくさんいた。友達から同じ人を好きだと言われたら、真っ先に譲ってしまう。だけど、心の内で好きになった気持ちは止められなかった。

恥ずかしくて、告白は出来なかったが、最後に勇気を振り絞って、卒業式に「第2ボタンがほしい」とお願いした。願いは叶い、照れながら写真を撮ってもらったのが最後。私の恋は卒業式とともに終わった。あー、高校生かー。なんとなく桜が散った気持ちだった。

クラスメイトの彼から届いたメールに嬉しさと動揺でいっぱいになった

私は志望校に落ちた為、志望していない女子校への進学が決まっていた。地元の中学は、同じ小学校出身の子たちが通っていた為、9年間ほぼメンバーが変わらない。だから、お別れは寂しかった。

卒業式の後、クラスの友達とゲームセンターに行き、プリクラを撮って、ファミレスに行って、思い切り楽しんだ。みんなで連絡先を交換して、「またクラス会やろうね」って名残惜しく別れた。

私は中学を卒業して、ようやく念願の携帯電話を買ってもらった。教えてもらった連絡先にメールをして、電話帳に登録していった。同じクラスの友達からメールが返ってきた。付き合ってる子がいる、と噂を知っていた彼から。だから、やり取りの最後に告白されるなんて、1mmも思っていなかった。とても長文で、誠実に丁寧に想いが綴られていた。

驚きとなんとも言えない気持ちだった。告白してくれた彼は、小学校の高学年で同じクラスだった。好きとかいう気持ちをまだ知らない頃に、実は気になっていた。

だから、え、いま? 私を? え、そうなの? けど、私は違う人を好きになって、あなたも違う人と付き合って、けど、もうその恋も私の恋も終わったところで。えっとー。私の頭は動揺していた。

それと、最後の一文にあった「本望」という意味が分からず、そそくさと机の上にある辞書で意味を調べた。付き合いたい、とかではなくて、きちんと自分の気持ちを伝えたい、それが「僕の本望だ」と。自分の部屋でメールを読んで、嬉しくて飛び上がった。

でも、もう卒業したし、これからお互い高校生になって毎日会えなくなる。自分が彼の気持ちに答えられるか分からなかった。だから、「ありがとう」と伝えて、連絡は徐々に途絶えた。

高校生になり、それなりに生活していたとき、彼から連絡がきた

私はそれから高校生になり、それなりに楽しく過ごしていた。女子校ならではの10人程の仲良しグループもできて、楽しかった。入りたかった吹奏楽はなく、演劇か軽音かバスケで悩んだが、どれもしっくりこなかったので、部活には入らなかった。習い事に部活に塾に忙しい小中を過ごしてきたため、急に暇になったが、私は遊び方を知らなかった。

高校2年になり、それなりの楽しさが怪しくなってきた。私のクラスは、3年間クラス替えがない。女子特有の誰かを仲間はずれにする順番が回ってきた。私の大嫌いな行為。いつの間にか仲良かった友達から無視されるようになった。誰かがそんな思いをするなら、私でいいって本気で思ってた。だけど、それはかなり辛かった。

そんな状態が続いていた頃、久しぶりに彼から連絡があった。「またみんなで集まりたいね」って。それで、「また会いたい」って言われて、2人で会うことになった。

実はかつての告白をされてから、今度は私がだんだん彼のことを忘れられなくなり、いつの間にか好きになっていた。けど、今さらこっちが好きになっても、向こうは共学だしすっかり忘れているだろう、と自分の気持ちを抑えていた。だから、連絡をくれて嬉しかった。

久しぶりに会った彼から、2度目の「告白」をされて、私は驚いた

近くの公園で散歩をしながら、会っていなかった間の話をした。話している時間が嬉しかった。そして、最後は思いがけず2度目の告白をされた。また驚いた。動揺した。

一言目に「ごめん」と言ってしまったから、彼は慌てて「いいんだよ。けど、友達でいたい」って言い、私は「あ、うん」って言った。

違うんだ。本当はね、びっくりしたから「ごめん、少し待ってほしい」って言いたかった。それと、最近いじめられている自分のことを言えなかったし、そんな自分なんか好きになる価値なんてないって、自分で誰かが好きになってくれることを認めてあげられなかった。だから、混乱していた。本当はすごく好きなのに。そんなの関係ないのに。

一瞬の告白を取り戻すことができずに、そのままお別れした。私は告白されたのに、失恋した。2度も告白されたのに。2度好きになった彼に、「ありがとう」しか伝えられなかった。結局、2人の恋は始まらないまま、お互いの人生の道は違う方向へと歩いていった。

“本望”という言葉を見るたびに彼のことを思い出す、私の大切な思い出。ありがとう。そして、ごめんなさい。あの時、私の本望を伝えられなくて。