「しんゆう」と調べると親友、真友、心友などと出てくる。順にとても仲がいい、心から理解しあえる、信じ合えるという意味だ。
しかし、私の親友はどれにも当てはまらない。秘密はすぐにバラすので、もう何も言わないようにしている。また、旅行に行ったり、たくさん遊んだりするのは別の友達だ。

彼女とは、中学で知り合った。空気が読めず、すぐに壁を作ってしまう性格の彼女はすぐに一軍たちのいじめの標的となった。そして、彼女と仲良くしていた私はしょっちゅう先生の事情聴取を受け、彼女から一軍の友人の悪口を聞かされ続けた。

ここまで聞いてなぜ私がいじめられないのか、そんなに嫌な彼女と縁を切らないのかと思う人もいるだろう。それは私の性格にあると考えている。

私は人に嫌われるのが何よりも怖い。それが、誰であってもだ。だから、なるべく当たり障りのないように友人に接している。所謂八方美人なのだ。
しかし、この性格がのちに彼女と私の友情物語を作っていくのである。

大学デビューには、彼女の存在は邪魔だった

去年、私は晴れて女子大生となった。
大学生になったら、やっぱり彼氏も欲しいし、新しい友達も欲しかった。そこで私は大学デビューをすることにした。
癖毛だった髪をストレートにし、化粧もした。すると、周りに人がたくさん、ということはなかったが、今まで無縁だった派手な友達ができた。

秋頃のことだった。派手な友達のRちゃん(以下Rちゃん)がテーマパークに誘ってきた。Rちゃんは男友達も多かったため、男の子二人も一緒に行くことになった。
彼女は依然として私に寄生していたため、「私も行きたい」と言ってきた。それを見たRちゃんが「大勢の方が楽しいから!」と言ったため、彼女も行くことになった。
彼女が来ることは気がかりだったが、男友達など今までできたことのなかった私はそれなりに楽しみにしていた。
しかし、彼女はそのテーマパークでもみんなに馴染むことはできず、結局私以外と全く喋らなかった。「ワイワイしていて嫌い」と悪口まで言い始めた。そんな彼女に私は心底呆れていた。

結局、彼女なんだなって気付かされた

事件は、帰る直前に起きた。Rちゃんが「今日は帰りたくない、みんなで泊まろう」と言い始めたのだ。
男友達二人はすぐに同意した。私は、本当は嫌だったが断る理由もなく、「いいなあ、私も泊まりたいけど、でもどうしよっかな」などと言い、ずっとモジモジしていた。
Rちゃんと男二人は私に「もう泊まろうや」としつこく誘ってきた。私は怖くなって断ることができなかった。
彼女は私に、いつもなら私がキレてしまうくらいしつこく、何度も何度も「帰った方がいい」と言ってきた。彼女のしつこさが、Rちゃんたちの勧誘に勝った私は断る勇気が急に出た。
「ごめん。私、実家暮らしだから、お母さん心配するから帰るね。また誘って」
そう告げ、逃げるように場を去った。

彼女と二人きりになった駅のホームで、私は泣き出しそうになった。Rちゃんたちのさっきの恐怖から解放され、「私、間違っていないよね?」を繰り返した。彼女はいつになく優しく「うんうん」となだめてくれた。

私の親友は、友情漫画のようなセリフを言わない

「代わりに言ってくれるのが親友だ」このように捉える人もいるかもしれない。
仮に「嫌い」と悪口を言った彼女が、Rちゃん達に言うことになったとする。すると彼女は、「泊まるなんておかしい」と喧嘩になるようなことを言うだろう。そして場の空気が悪くなり、私も何か意見を求められるかもしれない。

Rちゃんたちとは今後四年間、同じ大学で勉強する。八方美人な私にとって誰かから嫌われるのが一番怖い。そうなるとやはり、私が申し訳なさそうに言うのが、私の中での正解だったように感じる。

この経験から私にとっての親友とは、いざという時に私にぴったりの方法で問題解決に導いてくれる人という定義だと捉えるようになった。