「留学」にずっと惹かれながら、抵抗を感じていた。

中学生の頃に海外小説とディズニーにハマって以来、ずっと海外に淡い憧れを抱いていた。いつか海外に住んでみたいなーと。
中学生の頃、親にいつか留学してみたいと言った時、「語学だけなら日本でもできる。語学留学じゃなくて行くなら学部留学にしろ。海外で学びたいことがあるわけでもなく海外に行ってみたいだけでしょ?なら旅行でも良くない?」と言われた。
全くその通りだと思う。今でもそう思ってる。その事に対して全く言い返すこともできず、だからといって学部留学するために努力する程の情熱もなく、憧れだけが残った。
その淡い憧れが、いつの間にか憧れで済ませることが出来ないところまで育ってしまった。長い時間をかけて「自分はいつか留学して海外で暮らすんだろうな」と確信めいたものになっていた。
でも行く勇気も理由も行動力もなくて、努力もしたくなかった。だから必死で行かなくていい理由を探していた。

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コロナになって正直ホッとした。ずっと留学に行きたいと思ってたけど、行く理由も勇気も頭もなかった。だけどコロナになったから行かなかったんじゃない、行けなかったからしょうがないって自分を正当化できる理由ができた。
でも他の人はコロナ禍でも留学したりできることをやっていて、自分ってコロナに甘えてるだけなんだなと突きつけられて辛かった。そして私がなれなかった「情熱ある本当に学びたい人たち」と「ただ海外に憧れているだけの自分」との差を実感して苦しかった。
だからといってすっぱり諦め切ることもできず、ずっとお金だけ貯めてる自分が馬鹿らしかった。勉強は本当にしてなかった。本当に勉強が嫌いなので。

4年生の5月末、流石にもう憧れの賞味期限がすぐそこに来ていることを感じながら、国際交流センターに行った。
「留学はもう間に合いません」って言って欲しかった。もうすっぱり諦めたかった。
でも「秋学期からの認定留学、まだ間に合いますよ」と言われた。その瞬間に心は決まっていた。
やっぱ私海外行きたい。特に学びたいことも高い志があるわけでもないし、休学するほどの勇気もないけど、海外行きたい。海外で暮らすということがどういうことか、経験してみたい。

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私の中で留学ってすごいハードルが高かったから、留学に行きたいと言うのも勇気がいることだった。「お前が?なんで?」と思われそうで。なるべく先生や友達にも相談したくなかった。
いざ行くとなって恥を忍んで相談してみたら誰もそんなこと言ってこなかったし、むしろ応援してくれて泣きそうだった。理由や目標がないと正しくないと思い込んでいたのは自分だけだったのかもしれない。

私は情熱的な人間でもないし、絶対にやり遂げたいこともない。留学に来てみても留学に行く理由や目標なんて見つからなかったし、理想的な留学生にはなれなかった。今もそんなに勉強してない。これからの人生もきっとそう。明確な目標を持って留学してる人たちは本当にすごいなと思うし尊敬する。劣等感も感じる。
でも私のような人間が理由に拘っていたら、きっとどこにも行けないままで海外のことをずっと引きずっていたと思うから、これで良かったんだなと思う。

留学の価値とか学びとか、そういう誰かを納得させるような理由は説明できないけど、とにかくフランスに来てからの日々は毎日楽しい。昔から憧れてたことをついに実現できて嬉しい。自分を誇りに思うし、来て良かったと心から思ってる。
これからも「こうありたいけど、なれない」ということで悩んでいくと思う。でも深く考えずにとりあえずやってみるみたいな、そういう風に生きていきたいかも。