わたしは行間が読めない。
空気も読めなければ、雰囲気も掴めない。
きっと把握している以上に、誰かを不快にしてしまっている。
「この話をしたい」
「今、これをしたい」
自分の心に従えば従うほどに、わたしは自制が取れなくなっていく。
裸のままのわたしじゃ、生きられない。
この、辛くて残酷な世界では「わたし」は生きていくことができない。

一緒にいて楽しい人って、きっと、誰にだっていますよね?
すぐ手の届く範囲にいる人、遠くても気軽に連絡を取ることができる人。本名を知らなくても、自分を一番に理解できる人。
わたしは、楽しいと苦しくなるし、嬉しい時間の後に、途方もなく孤独感を感じてしまう。

◎          ◎

「発達障害」。流行りの言葉で診断されたわたし。
わたしは、どのレベルの障害なのか自分で理解していない。
ついこの間まで誤診されていて鬱と言われていたのに、双極性障害と言われるようになったりで、どんどんわたしから「わたし」が遠ざかっていく。

何も知らない方が幸せだったと思う。そうじゃないと、ただただ悲しいままで良かった。名前のない感情に曖昧に守られていた心が、崩れていく音を感じるのだ。

好きな人といる時が、一番楽しいでしょう?
わたしだってそうだった。
好きな人の好きな顔を見て、わたしのことを見つめてくれる瞳が愛おしくて。小さな世界に二人きりでも良いって思えるくらい、愛していた。
身体の全てを曝け出しても、怖いことなんて何一つなかったのに、心が苦しくて仕方がなかった。

わたしを、「わたし」自身を知られてしまうことで、こんなにも傷つけてしまうなんて、思わなかったから。

「わたし、貴方の顔が大好きだし、性格も何もかもひっくるめて大好きなので、この間も含めて困らせてしまうつもりはなかったんですけど、人の気持ちが分からないので、詰めてしまってごめんなさい。重いと思うんですけど、今でも多分ずっと大好きです。怖がらせるような態度をとってごめんなさい」

何度も心の中で謝った。想いを込めて、全身全霊で。

「人の気持ちが分からなくて平気で不快にさせる人とは友達としても関わりたくないな。今後はそちらからは連絡を控えてもらえるとありがたい」

この言葉がわたしに与えられるのは、必然だったに違いない。
彼が悪いんじゃない。
こんな風に彼を変えてしまった、自分という魔女を恨むべきだ。
この人に、こんな言葉を浴びせてしまった「わたし」が悪いのだ。
だからこそ、わたしをこの世に生み出した世界を、どうしたら受け入れられるのだろうか。

優しい顔で微笑む人を、苦しい顔にさせてしまった。
「わるもの」は、わたしがずっと隠してきた本当の「わたし」で。

◎          ◎

思った時に、思いのままに話をしてしまう。
やりたい時に、やりたいことをしてしまう。
人との距離感を測り違えてしまう。
わたしと「わたし」は、すぐに心を開いてしまうからーー無垢な刃物で「ひとを傷つけてしまう。

ごめんなさい。
ごめんね。
すみません。

許して欲しいだなんて、一つも考えていません。
どちらかが悪いなんてなくても。原因を作ってしまったのは「わたし」で、止めることができなかったわたしも共犯者だった。

たとえわたしが社会に適応したとして、それは本当に自分なのだろうか。
偽りの仮面で生きていて、苦しくないはずがない。

わたしとは一体、なんなのだろうかーー。