昔から根暗で友人は少ない方だったし、それに対して恥ずかしいだとかやばいだとかそんな感情もなかった私。
だから、学生時代から今も変わらず付き合いがあるのはたった1人。
保育園から一緒の"あきちゃん"だけだ。

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彼女とは小学3、4年生の頃に仲良くなって、放課後は毎日のように一緒に遊んでいた。高校は別だったけど、ずっと連絡を取り合っていたし定期的に会っていた。
成人式だって2人して参加せず、2人だけで乾杯した。

そうはいっても彼女と遠出をしたのは修学旅行くらいだし、旅行どころかプライベートで外に飲みに行ったこともない。
出かけたことがあるのは、せいぜい近所のお祭りやカラオケくらい。
悩み事の相談もあまりしない。
それで仲が良いって言うの?と疑問に思われるかもしれない。
でも、あきちゃんは私にとって無二の大親友だ。

私たちが会うのは、ほとんど彼女のお家だ。
あきちゃんは実家暮らしで、エレベーター付きのめちゃくちゃ立派な一軒家に住んでいる。
エレベーターの中には、彼女が大好きなアニメの写真やポスターが目一杯貼られており、行くたびに「また増えてるな」と、新しいものを密かに見つけるのが恒例だ。
話す内容は昔から変わらず、好きなアニメや漫画、最近読んだ本や好きな絵画の話など趣味の話が主だ。お菓子を食べながらくだらない話をしては笑い合い、最終的には2人とも結婚とは縁遠そうなので「おばあちゃんになったら毎日連絡取り合おうね」なんて話になるのがいつもの流れだ。
あきちゃんと話をすると、普段の生活や仕事で疲れやモヤモヤすることがあってもなんとなく癒される。アラサーになって色々と考える年齢ではあるのだが、彼女と話すと、途端に何者でもなかった頃の自分に戻れる。

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そして、そんな彼女のどこを推したいのか。
ここまで読んでお気づきの方もいらっしゃるかもしれないが、あきちゃんは車椅子なのである。

詳しい説明は省くが、小学6年の時に彼女は車椅子になった。
市外の病院に入院していたこともあり、その頃は私も月イチくらいで母にお見舞いに連れて行ってもらっていた。
行くといつも笑顔だったので気づかなかったのだが、実はその頃の彼女はずっと、歩けていた頃と今の自分とのギャップに悩んでいたという。
それを、彼女から直接ではなく、お世話になっていた中学の養護教諭の先生から聞いたときは、私が知らないところで彼女がずっと1人で闘っていたということにとても驚いたし、なんで気づいてあげられなかったのかと悔やんだ。
結局、現在に至るまで何も話してはくれないけれど、今では鮮やかに車椅子を操作するあきちゃんは格好良い。そして、1人で闘って1人で勝ったあきちゃん。あまりに格好良すぎて、漫画の主人公でも違和感がない。
もちろん、1人で闘うだけが美しいとか偉いとか言うつもりはないけれど、そんな彼女を私は誇りに思う。

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ここまで話しておいて言いにくいのだが、かくいう私も悩みをあきちゃんに相談することはほとんどない。
それは決して信頼していないわけではなく、私が彼女と「昔の自分に戻れる関係」でいたいから。会っている時間は、悩み事を話すよりずっとくだらない話をしていたいからにほかならない。
彼女も同じように思った結果、1人で闘っていたのなら嬉しいなと思う。

つい最近も、あきちゃんに会って来た。久しぶりに会ってまずやったのが、アクリルスタンドを並べての撮影会!
子供の頃のお人形遊びと変わらない。しかも、それをやっているのがまあまあな妙齢の女2人。それはそれはシュールな光景だっただろう。
でも、きっとこれからも私たちはこんな感じだと思う。定期的に連絡を取り合って、たまに会ってはくだらないことで笑い合う。

あきちゃんがいれば、きっと老後も楽しいはず。
だから、少しでも健康に過ごせるようにダイエットを始めなくてはと、意気込みだけをここに記して今日のところは終わりにしよう。