私には何でも話せる高校時代からの友人が2人と、短大時代からの友人が2人いる。
彼女たち4人とも毎日密に連絡を取り合っているわけではない。だけど、お互いが会いたい時に連絡を取り合い、たまのLINEや電話でも、お互い変な気を遣うことなく何でも話せる私のかけがえのない大切な友人たちだ。

今回はその4人の内の1人、高校時代からの友人である彼女について書こうと思う。
彼女と私は名前がとても名前がよく似ている、というかほぼ同じである。
だから今回は彼女のことを“もぺちゃん”と呼ぶことにする。

社会人になってできた親友。彼女のおかげで辛いことも乗り越えられた

もぺちゃんと私は高校3年間同じクラスだった。高校時代は同じグループだったけど、そこまでずっと一緒にいた記憶がない。むしろ高校卒業後から急に彼女との距離が縮まった気がする。
きっかけはよく覚えていないけれど、医療事務の専門学校に通うもぺちゃんと夜間の短期大学に通う私で、お互いの近況報告を兼ねて一緒に食事に行ったのをきっかけに私たちは頻繁に会うようになった。

お互いが社会人になってからもそれは続き、彼女の職場の近くに私が転職してからは毎月1度『もぺもぴの会』と称して、2人が前から行ってみたかったパンケーキ屋さんや鉄板焼き屋さんを見つけては、そこで仕事終わりに夜ご飯を食べながらおしゃべりをするのが恒例だった。

もぺちゃんは色白で、黒髪ストレートの華奢な女性だったから、か弱そうな印象をよく周囲から持たれがちだった。そんな彼女だけど、中身は将来の展望や自分の信念をしっかりと持った強い女性だった。

食事に行けば彼女の話をもちろん私も聞くのだけれど、そんな芯の強い彼女に何か縋りつきたくて、いつも仕事の悩みや恋愛の相談をしてしまっていた。
もぺちゃんはそんな私の話をいつもうんうん、と真剣に聞いてくれた。決して私のことは否定しないけれど、だからと言って私の肩だけを持つこともなく、いつも中立な立場で私がぶち当たった仕事の問題や人間関係の悩みを一緒に真剣に悩んでくれる。
私は毎月の彼女との約束があったから、「今月は一緒にもんじゃ焼き食べに行くからその日まで頑張ろう」と、当時の辛い仕事も乗り越えることができた。

親友が地元を離れ、ぽっかり空いた私の心。感情に蓋をするように

そんな『もぺもぴの会』が1年ほど続いたある日、コーヒーショップで大事な話がある、と彼女から報告を受けた。
「もぴ……あのね、私、彼と結婚することになったの」
「ほんとに!?わー!!ついに結婚するんだね!本当におめでとう!!!」
興奮して喜ぶ私とは反対に、少し寂しそうな表情をするもぺちゃん。どうしたの?と尋ねると、彼の仕事の都合で転勤することになってるの、だからもう毎月会うことはできないんだ、と彼女はとても悲しげな表情で話してくれたのだった。

彼女の入籍と引越が決まり、最後の『もぺもぴの会』の日はあっという間にやってきた。
最後には一緒に牛カツを食べたんだったけな。親友の門出を祝福したいという高揚した気持ちと、これが最後なんだという寂しい気持ちのせいで味がなかなか思い出せない。
もぺちゃんが地元を離れてしまってから、私の心はぽっかりと空いてしまった。

彼女との毎月の約束がなくなってしまった私は家族とのトラブルも、仕事での悩みも誰にも話せず、すべて自分だけで抱え込んでしまっていた。
「きっと大丈夫、私さえ我慢していれば何とかなる」
辛いことがあるたびそう繰り返して、自分の心に嘘をついて騙しては、泣き出しそうな溢れる気持ちに無理やり蓋をした。

お互いが必要な存在だと気づけた電話の時間は、毎月恒例になった

そんなある日のこと、もぺちゃんから着信があった。
「もしもし、もぴ元気にしてるかなぁ?」
その声を聞いて、溢れそうな気持ちの蓋が開いてしまいそうだった。
お互いの近況を話したり、そっちの天気はどう?なんて他愛無いやり取りを交わしたりした。私が最近抱えていた悩みも、もぺちゃんがいつものようにうんうん、と聞いてくれて、心の蓋は壊れることなく私は救われた。

「もぺちゃん、本当にいつもありがとう。いつももぺちゃんに救われてるなって思う」
そう私が恥ずかしいセリフで感謝を伝えると、もぺちゃんも照れ臭そうにこう言った。
「こちらこそだよ。今までも話聞いてもらえて私も救われてたよ。今もね、初めての見知らぬ土地で不安だったけど、もぴとの電話でなんだか元気もらえてる、ほんとにありがとね」
私だけが一方的に救われていたと思っていたけれど、私の存在も、もぺちゃんの救いになれてたんだな。よかったぁ……。

2時間ほど話した後、電話を終えた。それからは毎月会えない代わりに2時間ほど電話をするのが恒例になった。
「明日の仕事憂鬱だけど、頑張ったら土曜日はもぺちゃんと電話だ」
この毎月恒例の2時間の電話も続いて約2年が経つ。これからもこの2時間が私の心を救ってくれるのは間違いない。
もぺちゃん、いつもありがとう。そしてこれからもよろしくね。