会社の先輩に知り合いの男性を紹介していただいた。その方は、年齢は四つ違いで、少し離れた県に住んでいる人だ。

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初めて会った時は、紹介してくれた先輩を含めて3人でランチをした。第一印象は、優しそうで、スタイルのいい人だなと思った。先輩と紹介してもらった人、Aさんは元から知り合いであるので、先輩がいる間の話題には、私にも気を遣った話題選びをしていたことは間違いないと思うが、困らなかった。

先輩が次の予定で帰ってから、二人きりになると急に気まずくなるかと身構えていたら、結婚願望があるのか、いつまでに結婚したいのか聞かれた。これまでも男性を紹介してもらったことはあるが、初対面の時から結婚の話が出た人はいなかったので、少し戸惑った。

その後散歩をしながら、仕事の話や食べ物の話をして、夜ご飯の前に解散した。翌週とその次の週も連続で会った。ごはんを食べた時には、何度かごちそうになった。遠方から会いに来てくれる熱意は、これまで出会った人にないものを感じた。

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平日には、夜寝る前に今日あったことを電話で話した。その時にも、日々のコミュニケーションは、私の負担にならないようにと気を使ってくれた。

私は今、年度末にかけて、仕事のピークを迎えている。毎日残業でヘトヘトになっている中で、仕事ばかりしている女性についてどう思うか聞いてみた。Aさんは「仕事を頑張っている人が好き」と私が今一番欲しい言葉をくれた。また、社会人の先輩として、仕事の進め方であったり、物事の考え方、そして後輩に対する接し方など、私が今悩んでる事についてアドバイスしてくれた。
そういう意味でも人として尊敬している。

結婚への道筋を見せてくれているという点に対しては、私がこれまで夢見た結婚に一番近づけるアプローチをされている。それなのに私はその希望に応えられないと思った。加えて、彼とは友達にはなれないと言った。

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結婚するか、関わらないか。それは結婚をしたいという目的があるから、その中間地点のようなものは存在しないという意思表示のようだった。人として彼のことを尊敬しているが、夫としてこの人を選んでいいのか本当に悩んだ。とてもいい人なのに、向けてくれた愛情を返せない自分を見つけて罪悪感を感じた。

Aさんといるとき、結婚式の話になった。出会って1ヶ月以内だというのに、結婚式に対して前向きで、話し合いができること自体これまでにはなかったことで、私がずっと願っていたことである。それなのに、まるで他人事のように感じてしまって、一歩下がって話している自分がいた。Aさんが「クールですね」とポツリと溢すことがあったが、そのような私の態度に対してのコメントだったのかもしれない。

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最初はアプローチされることに対して、私の心の中は嬉しさ半分、照れ半分といった感じであった。
しかし徐々に、違和感が芽生えてきた。結婚の話は出ているのに、結婚後に住む場所であったり、仕事の話ができてないことに気づいた。

お互いに今の仕事を続けるのであれば、どちらかが出勤するたびに小旅行することになり、一緒に住めないだろう。こちらから話題を振れば良いのかもしれないが、結婚というゴールは同じでも、人生を歩むペースが合っていないのだということに気づいてしまってからは、積極的に聞きたいと思えなくなってしまった。

最後にもう一度言いたい。
Aさんのことは、人として尊敬しているし、仕事がしんどいときに助けになってくれたことに感謝している。願わくば友達として仲良くしていきたい。