人それぞれ苦手な家事、やりたくない家事があると思う。洗い物が面倒くさかったり、整理整頓が苦手だったり。
そんな中で私が嫌いな家事第一位が料理だ。なぜ料理が嫌いかというと理由は単純で、食に興味がないからだ。健康と美容のために意識して食事をとるようにしているが、それがなかったら正直グミのみで良い。というかむしろ食べなくていい。
食事をおいしいとは感じるし、出されたら食べるけど、わざわざ作ってまで食べたいものではないし、自分の時間を割くほどのことではない。
私にとって食事はプライオリティがかなり低いのだ。

好きな人ができた時に脳裏によぎった、「男の胃袋を掴むと良い」

そんな理由で今までほとんど料理を作ったことがなかった。興味も一切なかった。
でも、ある日好きな人ができた時に「男の胃袋を掴むと良い」という言葉が脳裏によぎった。
その人のことが好きで好きでたまらなかった私は、人生で初めて料理というものに挑んだ。
相手の家に行くことになったときに「ちょっとおかずを作りすぎちゃって、手ぶらも何だからタッパーに詰めて持ってきちゃいました~」という、あたかも普段料理してますよ!というアピールと、作りすぎていらないから持ってきたわけであって、別にわざわざあなたのために作ったわけではありませんよ!というアピールを詰め込んだ手土産を渡した(恋愛経験がほとんどない私には、この手土産が果たして正解だったかは今でも分からない……)。

この時、私はおかずを5品ほど作った。どれも、レシピを見て丁寧に作った。段取りがうまくいかず、途中でイライラして投げ出したくなった。1人暮らしのキッチンはコンロが一つしかないし、火を使った料理を効率良く進めるのが困難だった。まだ使うスプーンをシンクに入れてしまい、新しいスプーンを出して洗い物を増やすというザマだった。
出来あがった料理も何人家族なんだ?と問いたくなるくらい大量にできた。
全て作り終わったときには、10時間くらい経っていた。本当に疲れたし、完成して気が抜けると知恵熱が出てしまった。
もう料理なんて二度とやりたくないと思った。
でも、いざ好きな人に料理を食べてもらうと、何回も美味しいと言ってくれ、料理上手だねと褒めてくれた。
その時私は初めて料理をすることの楽しさが分かった。

自分のために料理することはおっくうでも、誰かのためなら楽しい

今までは、料理=自分のためだと思っていたし、誰かに振る舞うなんて頭になかったけど、こうやって誰かに喜んでもらうのってすごくやりがいを感じることだと思った。
今でも自分のために料理をすることはおっくうだけど、いつか誰かに振る舞うためと思ったら、料理をするのが楽しくなって、そこから頻繁に料理を作るようになった。
そして今では前よりは段取りも良くなって、腕も上がった気がする。

今年のバレンタインには家族にボンボンショコラを渡したが、父に「お店のチョコレートかと思った!」とまで言わしめた。
そうなるとまた、もっと相手を喜ばせたいなと思い、さらに練習する。人のために何かをすることのパワーはすごいなと改めて感じた。