25歳、人生で初めて「退職代行サービス」というものを使って、仕事を辞めた。
ブライダル関係の営業を1年程続けたが、上司とのマネジメントが合わずにモチベーションとエネルギーがプツンと切れてしまったのだ。
前までは「できない自分が悔しい」と、どれだけ叱られようが、失敗しようが、反骨精神で這い上がってきたが、もうその反骨精神も削がれてしまい、心から「この会社で働きたい」と思えなくなってしまった。
とはいえ、辞めますと言って簡単に辞めさせてはもらえなかった。
「人手不足だから~」とか、「残される先輩の気持ち考えたのか」とか、「恩返しであと2ヶ月は働けよ」とか。もう心が消えてるのに、燃やせと言われても、もう燃やせないことが悔しいとすらも思えなくなってしまった。
まるで半分死んだ状態で生かされているような気分だった。
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プツンと切れたきっかけは、ついに手を上げられたからだ。
上司は、「ノリだよ」「男じゃなくてよかったね」「何回言っても手が出るまで理解できないお前も悪い」と言った。それに加え、わたしのメンタルが弱く、受け取り方がおかしいということになった。怒りも通り越して、呆れて笑いも出なかった。酷な話だ。
親友に、この事を話したら「柚希は、昔から誰にも迷惑かけずに~とか、感謝を忘れることのない人だよね。そんな柚希が恩返ししたいと思えない事をしていることに、会社の人が反省するべきなのに…おかしいよね」と静かに怒りが沸いているのが伝わってきて、わたしの代わりに怒ってくれている親友の心に救われた。
恩返しというのは、「しろ」と言われてするものではなく、された側がしたいと思うからするものだ。
本当に部下を思う上司ならば、そんなことを言う筈がない。
「柚希ちゃん、ずっと思い詰めた顔してるから心配だったんだ」
唯一寄り添ってくれた先輩は、私の様子がおかしいことに気づいて、気を遣わせてしまった。
大好きなお客さんの前でも、苦しい貼り付けた笑顔しかできなくなってしまって、その状態で続けることが苦しかった。
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今じゃ、退職代行を使った後悔は少しもない。
真面目で、入社して一度も休んだことのない社員を、そこまで追い込んだという事実を会社は一生背負えばいい。
後に入ってくる後輩や残された先輩が、少しでも働きやすくなればいいと思った。
偽善といわれてもいい。上司は一生変わらないだろう。
わたしの退職を「あいつ、クビにしてやったわ」と言う程なのだから。
きっと、あいつは人としてクズでメンタル弱かったな~程度にしか思わないのだろう。
別にそれでいい。わたしがした選択なのだから、全部背負って生きていく覚悟だ。
退職代行サービスというのは、あまりよく知らない人からすると「ずるい」とか「逃げだ」とか思われるかもしれない。
でも、退職代行サービスを使う人は“真面目で、自分の意見を言ったけれど聞き入れてもらえない、丸め込まれて相手にしてもらえなくて、それでも逃げることはできないから、お金を払って、弁護士までつけて、辞めた後の手続きをお願いするという人がほとんど”と言われている。
だから、まだ浸透していない現代では良いイメージは少ないかもしれないけれど、「退職代行サービス」を使って救われる人がいる。という事実をここに残したい。
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現在、休職期間で次の職場を探しながら、自分の好きなことや得意なことを改めて探している。
こうして自分と向き合う時間は、仕事人間だったから貴重で新鮮だ。
わたしは人生において、「仕事」というものは人として成長していくことに欠かせないものだと思っている。
だから、仕事内容よりも「どういう人の下で働くか」が何より重要で、「人として、尊敬できる人」の下で働けたらそれほど幸せなことはないんだと思う。
その尊敬できる人というのは、どれだけ役職が付こうが、偉くなろうが、些細なことに「ありがとう」という気持ちを持っている人だ。
「これだけ給料払ってやってるんだから」じゃなくて、「いつも頑張ってくれてありがとう」と言える上司。
その下で働けたら、もっと上司を支えたいと思えるし、そのために色んな仕事にチャレンジしようかなと思えるのがわたしの性格だ。
だから、次の職場はじっくり体験をして、見極めて進もうと思っている。
自分が仕事に対して、ここまで大切に思っていることに気づけたのも、前の上司のおかげでもある。だから失敗だって全てが経験値になるし、これからだって全てが未来の自分を幸せにする栄養だ。
全てのことに感謝して、前に進めたとき、いつもわたしは、“なりたい自分に近づいている”と心が震えるのだ。