私自身、政治にものすごく興味があって、ニュースを欠かさず見たり、詳しく調べたりしているわけではない。正直なところ、選挙の投票ハガキが届いたら投票所に行って、聞いたことのある人の名前を書いてくるだけである。
そんな私でも、日頃から少しずつ日本の政治について疑問に思うことはあった。

私は4年制大学に通って教育について学び、教員免許を取得した。
大学に通うための学費は、片親世帯の我が家にとってはかなりの負担となるため、学費免除申請と、貸与型奨学金を併用していた。貸与型奨学金の総額は400万円にもなる。
在学中、授業や友人の卒論で、教育と政治の関わりについて触れる機会があり、そこでは、他国の学費事情を目にすることがあった(この文章では「学費」という言葉は主に授業料のことを指して使っていく)。

奨学金を借りる必要がある日本の学費と、学費無料の国は何が違うのか

OECD加盟国の中で学費を比較すると、アメリカやイギリスの学費が高く、日本の学費もそれを追うように高額なのである。一方で、主にヨーロッパの一部の国では、公立大学の学費はなんと無料の国があるのである。
どうして日本の学費は奨学金を借りなければ払えないほど高額なのに、学費が無料の国が存在するのだろうか。何が違うのか、少し調べてみた。

日本の大学の学費がこれほど高額になったのは、今でこそ大学全入時代といわれているが、まだ大学進学がマイナーだった頃、高等教育を受けるのだからそれなりに授業料を負担するべきだという考え方に根付いているのだそう。2020年から大学の授業料を無償化する制度が始まったが、収入や資産、学力などの条件をクリアしなければ受けることができない。そうではない学生にとっては、無償どころか授業料の値上げの傾向は辛いものがある。
一方でヨーロッパの公立大学の授業料が無料であるのは、国が公的に支援しているからだそう。日本の大学はそれとは異なり、各大学が学費を設定し管理しているため、政治が直接関わって支援することは困難な仕組みなのだそう。

だからといって日本で今すぐヨーロッパ諸国のようなしくみを整えようとしても、それだけでコストがかかってしまったり、動揺する国民が大勢現れて政府の信用度が下がったりするだろう。

若者が感じる日本の政治に対する本音。刷新するチャンスはまさに今

私の中では、今の日本の政治は人口の多くを占める高齢者向けで、子どもやその子育てに関わる人、若者への政策はそこまで充実していない印象である。実際、20代の自分が自国の政策によって恩恵を受けているという実感がないのが本音だ。
だから、若者が自国の政治に関心が低く、いくら有権者の年齢を引き下げたとしても選挙の投票率が上がらないのではないかなと思う。自分の生活に直結しているはずなのに、なぜこんなに距離を感じるのだろうか。
「ゼロコロナ」ではなく「Withコロナ」を目指すように、今までと同じようには上手くいかない世の中だからこそ、私は、今までのやり方に固執せず、様々なしくみを見直し、時代に合わせた新しいしくみへと刷新していくチャンスはまさに今ではないかと思うのだ。

この度のコロナ禍で生活に苦しむ大学生の実態が浮き彫りになり、給付金や学費半額対応等の対策がとられたものの、それも応急手当のような一時的な対策という印象である。
怪我をしてからその傷を応急手当し、それで止血しているので治療しなくなる。また新しい傷ができたり古傷が痛んだりするが、それもその場しのぎの応急手当では同じことの繰り返し。そうではなく、どうしたら今後できるだけ怪我を防止できるかを考え環境を整えることの方が、長期的に見て効率的だし重要だと思う。

別物のように感じる私たちの生活と政治の世界を、もっと身近に

私自身、若者・社会人として自分の経験から感じたことがある。それは、退職のリスクが高い社会人1~3年目の退職後の支援が不十分であることである。特に、公務員から民間企業に転職した際の収入の差によって経済的に自立することが困難になってしまう場合がある。
もしかしたら使える制度があるのかもしれないが、知らないことで損をしている可能性もある。助けて欲しい時に国や地方自治政治は助けてくれるのか、どのようにして自分の声を政治に反映させたらよいのかよく分からないのが本音である。

国会中継を見ても「もっと政治について考えよう」とはなかなかならない。政治のニュースを見ても、「じゃあ具体的にはどうなるの?」「私たちの生活にはどう影響するの?」「それどういうこと?」となってしまい、難しいなぁと感じて勝手にハードルが上がってしまう。選挙に行っても何も変わらなそうと思ってしまう。
「若者は政治に興味がなさすぎる」とよく言われるが、それは、政治の世界と私たちの生活する世界が別物で、距離を感じてしまっているから。

若者は、もっと幅広く風通しの良い政治の在り方を求めている

我々若者が政治に関心を持って色々と調べたり、考えを発信したりしようとしても届かないので、国民として必要とされていない、自分一人が投票したところで何も変わらないと思ってしまう。
もっと政治との距離が近づいて、自分の生活に政治が関わっていることや自分たちの声が届くという実感があれば、もっと政治について知ろうと行動することにつながる。さらに、政府に対して求めることも明確になるので、どの人に投票したら良いかが分かり、投票率も選挙の質も上がるのではないかと思う。

若者は、もっと幅広く風通しの良い政治の在り方を求めている。