彼女のことを、もう既に推している。
未だにずっと仲が良い幼馴染のことである。
私達はお互いのことを「ビジュアルが良い〜」「尊い〜」などと言いながら推し合っている。
金曜の夜にふらっと一緒に飲みに行くだけで、ただ、美味しいお酒を飲みながら友達に話を聞いてもらう幸せだけではなく、同時に「推し」とお酒が飲めるというハッピーイベントも叶うのである。
なんとコスパが良いことか。
私は彼女の外見を褒めることが多い。小学生の頃は広末涼子似だと皆が口を揃えて言っていた。最近は吉岡里帆にも似ている。どちらにせよ、可愛いし美しい。だが今回は折角なので、照れ臭くて伝えられていない彼女の内面の推しポイントを書いていこうと思う。
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まず、彼女の気配りである。
私は彼女とご飯を食べに行くと、まさに家で全く動かない夫のごとく動けない。
彼女の動きは俊敏でしかも的確な気配りをしてくれるためである。取り皿や箸、調味料を取ったり、取り分けたりしてくれる。焼肉など席で簡単な調理がある料理に関しても、私が火傷してはいけないからと言って、私より遥かに白く綺麗な手でお肉を焼いて盛り付けてくれる。
彼女は服装や髪型など、見た目が華やかで、話し方も明るく、派手に見られることが多い。一方、私は大人しい見た目をしているので、勘違いをされることがある。例えば、見知らぬおじさまと相席して飲むことになった時なんて、彼女がお手洗いで席を立ったタイミングで説教をされた。
「あすかちゃん、付き合う人は考えた方が良いよ。あの子、なんか悪そうじゃん。ちゃんとした子と一緒にいた方が良いよ」
ちなみに「あすかちゃん」というのは私のことである。私はこの時、偽名を使っていた。
「あすかちゃん」は思う。ちゃんとしていないのは寧ろ私の方なのだ。いつもいつも、彼女に甘えて任せっきりだ。私は彼女にサラダを取り分けたこともないし、サムギョプサルのお肉を切り分けたこともない。率先して空いたお皿を片付けたり、飲み物を頼んだり、声をかけてきた変な男を追い払ったりしたこともない。
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そして、彼女の優しさも推さずにはいられない。タクシーに2人乗りあって帰る時、彼女は必ず私の家の近くで降りてくれる。その方がタクシー代が安くなるからではない。だって、彼女の家を通過してしまうんだもの。彼女はわざわざ先程通った道を戻って帰宅するのだ。私が彼女の家の近くで降りようとすると全力で止められる。
1人で歩かせるわけにはいかないし、1人でタクシーを降りるのを見られるのも危ないよ、と。
その全力っぷりにタクシー運転手もびっくりである。結局、推しの押しに負けて私の家の近くで降り、彼女は颯爽と帰っていく。彼女の1人歩きの方が危ないのではないかと言っても、元陸上部の脚力があるから大丈夫なんだそう。
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そうだ、彼女は私と違って運動神経が良い。小学生の時も毎回運動会のリレーの選手に選ばれていたし、陸上や水泳の大会で表彰されていた。
そんな運動神経を発揮して、休み時間は鬼ごっこをして遊ぶと楽しいだろうに、運動神経が悪い私のところに駆け寄ってきては、一緒に自由帳に絵を描いたり、他愛もない話をしたりしてくれた。
以上、彼女の代表的な推しポイントを挙げてみた。彼女への感謝と愛が溢れ出してきて、先程彼女を遊びに誘った。
本当にいつもありがとう、私の親愛なる推し。