数週間前、初めてひとりで飛行機に乗った。
福岡に在住する友だちに会うために。
友人に会うのは、実に4年ぶりだった。
中学高校と、同じ学校で、気づいたら仲良くなっていた。

◎          ◎

少し前に結婚が決まり、友人に報告したいなと思い、久々にLINEした。
その子ともう一人、そして私の3人のグループLINEに、少しだけドキドキしながらメッセージを送った。 

ちゃんと返事が来るんだろうか、と、4年の空白期間の友情を疑ってしまっていたが、思いの外、すぐに返事が来た。
よかった、私たちの友情は死んでいなかった……!と安堵し、そしてなによりも、2人とも元気そうなのが嬉しかった。

1人は私と同じ地元に住んでいた。もう1人は、訳あって福岡に住んでいた。
婚約の報告をしたら、2人とも祝福してくれた。そのあと、リモートでお茶会をし、昔はあーだった、こーだった、あの頃はよかったと青春時代の思い出話をし、ふと「福岡行きたいな」と私が思いつき、福岡で久々に会うことが決まった。 

◎          ◎

私は、3人で旅行を、どうしてもしたかったのだ。
20歳のとき、成人祝い旅行を3人で計画していたのだが、友人が前日に体調を崩し、3人で行けなかったことがあった。
そのことがず~っと心残りだった。
たまに思い出しては、「あのとき、3人でいけなかったよな~、行きたかったな……」と、思い出すのだ。

福岡に行く、これは、あの時の雪辱?を果たす絶好の機会だ。
そう思い立ち、提案してみた。
即答OKだった。
私たちの結束は、健在だった。
ズッ友万歳。

というわけで、旅行もとい積年の思いを晴らす計画は進んでいった。
……わけなのだが。
旅行へ飛び立つ前日に、私の祖父が亡くなってしまった。 

◎          ◎

数ヵ月前から、危篤状態ではあったが、一時的に回復し、安心できるかと思った矢先の出来事だった。亡くなる前日には、父と元気そうに電話もしていた。なのにだ。
あまりに突然だったので、悲しみやショックより、驚きが大きかった。

3人での旅行も、無理だろうか……。

今回も行けないのか……。
急に亡くなってしまったのは、どうして?
もっと会いに行ってあげてたら良かったのかも……。
人って、こんなにもあっけなく、逝ってしまうのか。

色々な気持ちが、ぐるぐる、頭を駆け巡る。
私はどうすれば、いいんだろう。
数時間、悩んだあと、自分の気持ちを確かめて、両親に伝えた。 

「私はどうしても、福岡には行きたい」
両親は、私の気持ちをしぶしぶ了承してくれた。
納棺と葬儀には参列した。
祖父が生きていれば、きっと、友だちに会いに行けと言ってくれるような、そんな気がしたのもある。 

◎          ◎

福岡旅行はすごく、本当に楽しかった。
まったく予想していなかったのだが、結婚祝いもサプライズしてくれて、じーんとしてしまった。
2人とも、全然変わっていなかったし、会えてよかったな、行けてよかったなという思いと、行かせてくれた両親には感謝している。

そのため、冒頭へ戻ることになるが、葬儀に出るために、ひとりで飛行機へ乗って帰ってきたのである。
ひとりで帰るのは、初めてのことだったので、正直不安だったが、祖父も見守ってくれていた気がして、離陸したら怖さは消えた。
空に近い距離だったから、祖父を感じたのかもしれない。
夜のフライトだったので、夜景が星屑みたいでキラキラしていた。

地元に帰ってから、バタバタしていたが、無事葬儀も終えることができた。
霊柩車に運ばれるとき、涙が頬を伝った。
ああ、もう、この人はいないんだな、と実感してしまったのと、滅多に涙を見せない父が、悲しみを堪えていたのを見て、胸が詰まってしまった。

葬儀のときは、祖父にお礼を言っておいた。
「無事に旅行に行かせてくれてありがとう。すごく、すごく楽しかったよ」

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