付き合うでもなく、もちろん大切にされるでもなく、ただ会って行為をするだけの人が何人かいた時のこと。
私はそれで、自分は孤独じゃないと言い聞かせていた。
こんなに複数の人が私に会いたいと思ってくれて、求めてくれて、心は満たされているはずだと思いこんでいた。彼氏がずっといない寂しさをそんなことで埋めていた。
心から好きと思える相手にやっと出会えたのに、同じ道を辿ってしまう
そんな時に心から好きだと思える相手に出会った。でもその彼と仲良くなっていくうちに、結局今までの男性と同じ道を辿ってしまった。私は彼に本気だったのに、彼は私に本気ではなかった。
私はいつも彼を最優先なのに、彼は私の順位なんて下から数えたほうが早くて、「お前に会う時間とお金がない」が口癖だった。
私が今まで散々フラフラしてきたから、本命の人にそういう扱いをされるという罰が当たったのだと思った。
今まで、男性にどんなひどいことをされても何も感じなかったのに、いざ本当に好きな人にそういう扱いをされると死ぬほど辛かった。
ちょっと寂しいからってその感情に負けて不特定多数の男性といる女は、大切にされないのは当たり前のことなのに、毎日落ち込んで涙を流す日々だった。
でも、その彼とダラダラ関係を続けていては自分は変われない、何も成長できないと思い、彼との連絡を全て断ち切った。すごく勇気のいることだったが、弱い自分や人から大切にされない自分を見ているのが嫌になった。
とにかく仕事や趣味で自分を忙しくして、その人のことを考えないようにしたいと思った。でもやっぱり寝る前やお風呂に入っているときなど、少しの隙間時間に彼のことを思い出してしまう。私は恋愛の傷は恋愛で埋めようと考えた。
一番欲しかった言葉をくれたのは、会ったこともない初めましての彼
マッチングアプリに登録し、とある男性とやり取りをしていた。マッチングアプリなので、本名で登録している人はほとんどいなく、イニシャルや偽名で登録している人が多かった。私も偽名で登録し、仲良くなった人にだけ名前を教えていた。
とある男性とメッセージで仲良くなり、電話をすることになった。彼は下の名前だけで登録していて、それが本名かも分からなかった。
夜9時頃、彼の仕事が終わったタイミングで電話をかけた。「もしもし……」最初こそ緊張したが、初めましてとは思えないくらいすぐに打ち解けた。
色々な話をして、恋愛の話題にうつり、最近の恋愛の話になった。
好きだった人からの扱いで深く傷ついたことを話すと、「辛かったね」と共感してくれた。すると、涙がボロボロこぼれてきて、初めましての彼の前でワンワン泣いた。
彼はびっくりしていたが、「そんなに泣かれたら、会いに行って抱きしめたくなる」と言ってくれた。
それはその時自分が一番欲しかった言葉だった。
その言葉が嘘か本当かはどうでも良くて、「時間とお金を使う価値がない私」に“夜遅くに遠方から会いに行く”と言ってくれたことが嬉しかった。
この世のどこかには自分に価値を見出してくれる人がゼロではないと感じさせてくれて一気に安心したのだ。
私がそんな出会いを果たせたのは、勇気を出して断ち切ったから
今までクズだった私がそんな出会いを果たせたのは、多分勇気を出して彼を断ち切ったからだと思う。ずっと関係を続けて彼の顔色を伺い、呼ばれた時だけ行く人生を歩んでいたら、こんなに素敵な出会いはなかったと思う。
私はこれを機に好きだった彼を吹っ切ることができ、もっと自分を大事にしてあげようと思えた。名前も知らない電話の向こうの彼に感謝している。