中学1年生、高校1年生、大学1年生の終わりに、決まって思ったことがあった。
このまま後輩のままでいたい。自分が上の立場になりたくない。
それでも、4月は来たし、新入生は入ってきた。そして彼ら彼女から見た「先輩」になった。妹弟がいることもあり、もともと下の子の面倒を見ることは嫌いではない。慕ってくれる後輩たちを見て、なんだかんだ先輩でいるのも悪くないなと毎回思うのだった。

ちょうど、社会人になって初めて先輩という立場になったので、学生時代の先輩後輩とはまた違うなということを感じていた。社会人になってから先輩になるということは、きっとそう甘くない。そして社会人になってからの後輩は、きっとこちらが一方的に面倒を見る相手ではない。

◎          ◎

大学2年生のとき、所属していたクラブの部長を務めることになり、それまで部長を務めてきた先輩、とりわけ自分が入部した時の部長である1つ上の先輩の偉大さが身に染みてわかったことがあった。自分の大好きなスポーツだったのに、部長になってからは全体を取り仕切らないといけないプレッシャー、初心者や初めて来る人がいる中で運営をするには自分が楽しんでいるだけではいけない状況がつらくて、それまでは楽しみにしていた練習に行くのがしんどいと感じることが何度もあった。

でもそれは先輩も同じだったと聞いて先輩は偉大だと思ったし、次の年に部長になった後輩も同じことを言っていた。こうして、先輩へのリスペクトは世代を超えていくんだなと感じた。それに後輩から慕ってもらったり、部長に就任した後輩たちから頼りにしてもらったりすることは先輩冥利につきる。そうやって、学生でいる間は、自分が後輩の役に立てるなら嬉しいくらいの気持ちで先輩をやっていた。でも、社会の荒波の中ではそうはいかないなと思うようになった。

◎          ◎

社会人3年目が終わろうとした頃、社会に出てから初めて先輩になった。もちろんそれまでに新入社員はいたのだが部署違いだったので、しっかり関わる、直接指導する後輩を持ったのは今回が初めてだ。

感じるのは、自分の行動を客観的に見直す機会をこちらが与えられているということ。よく、友達同士で勉強を教えあうと、教える側にもメリットがあるというけど、まさにそれだと思う。最も感じるのは、報連相の仕方だ。自分がそれを受ける立場になってみて初めて、自分から上司への報告が不足していたかもしれないと感じることが多くあった。後輩に指示した内容が終わっているのか否かの報告はこちらから聞く前に相手からしてもらえるとありがたいのにと思い、ふと、自分が上司にそうしていたことを思い直した。指示されたこちらは完了して当然だと思っているのでわざわざ言わなかったが、指示した側からすれば一言報告がほしいと思うのは当然のことだ。立場が変わると、見えてくるものも変わる。

◎          ◎

こんな感じで、新入社員から学ぶことは多くある。社会人になってからは、後輩といっても新卒ではない限り、相手は自分と違う会社で働いてきた経験があるし、時には自分より年上なこともある。今の会社や業務に関わることは全てこちらが教える立場ではあるけど、後輩の言動や仕事の仕方から学ぶことは大いにあると思っている。

今、直接指導しているのは、転職してきた社会人同期。年はひとつ上だ。社会人経験の年数が同じなのでまだそこまでは感じないが、これからどんどん人を採用しようという動きのあるベンチャー企業なので、年齢も社会人経験も私より遥かに豊富な後輩も、そのうち来るだろう。その時私はどう思うのだろう。自分の方が仕事ができないと感じて劣等感を覚えてしまったり、古参なのに営業成績を抜かれて悔しく思ったりすることもきっとあるだろう。それでも、負けずめげず貪欲に、相手から学べるだけのことを学んでやろうという気持ちで取り組めたらいいなと思う。