数日前、とてもショックなことがあった。
来月末に友人と3泊4日で大阪へ旅行に行く予定を立てていた。友人が格安航空のなかでも安いプランで、2人分のチケットを取ってくれていた。……のだが、私の仕事の都合上、そのチケットの日程では行けないことが発覚したのだ。

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私がいる部署では、普段は大抵定時には上がれる。それを過ぎたとしてもせいぜい30分程度。休みに関しても、無茶な連休でなければ、希望が通らないことはほぼ無い。だからこの日程でも大丈夫だろうと思い、チケットを取ってしまっていた。
しかし、なんとも不運なことに、4年に1度訪れる繁忙期に重なっていたのだ。入社1年目の私は、そのことを把握出来ていなかったのである。事前に先輩方や上司に確認をとれば分かったことなのだが、これまで通り問題ないだろうとタカをくくっていた。
という訳で、旅行は別日に移動せざるを得なくなった。
楽しみだった予定が先延ばしになったことに対する悲しみも勿論あるが、それ以上にショックだったことがある。

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格安のプランで予約したため、キャンセル料がべらぼうに高いのだ。
片道1人3000円超。私側の都合なので友人分も払う必要があるため、3000円×2(往復分)×2人分で、12000円程度。それにプラスして、元の便と新たに取り直す便との差額も払らわなくてはならないので、全て合計すると2万円くらいにはなると思われる。元の私の分の飛行機代にプラスして、2万円だ。
自らの確認不足を補うために、2万円を払う……。

1年目の薄給会社員には、辛すぎる行いである。全て自分のせいではあるが、とはいえ受け入れ難い。航空券の予約をしてくれていた友人にも申し訳ないし、散々だ。
こんなにショックな気持ちになったのは久々だーー。そう思ったとき、ハッとした。
そうか、私、ここ最近で一番ショックな出来事がコレなんだ、と。
2万円。私からすればとんでもなく大きい。しかし払えなくはない金額だ。
つまりコレは、お金を払うことで解決できる出来事なのだ。
それが一番ショックなことだなんて、私はなんて幸福な世界で生きているのだろうか。

思えば、学生時代は辛いことや悲しいことがたくさんあった。
私は信じられないくらい運動音痴で、体育の授業が来るのが憂鬱で仕方なかった。バレーボールの時なんかは、私のせいでラリーが続かなかった。誰も怒りはしなかったけれど、なんでコイツこんなに出来ないんだ……と思われているのは明らかだった。しかし、自分でもどうしようもない。急にバレーが上手くなることも、体育の授業を避けることも出来ないのだから。

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そんな日々と比べると、今はストレスのない平和な時間を過ごすことが出来ている。
それなりに苦戦した就職活動の末、内定をくれた今の会社は、私にはとても合っていた。将来性を考えると不安な業種ではあるのだが、仕事内容は私の得意な分野と合致していて、そこそこ楽しく働けている。年の近い先輩方は仲良くしてくれていて、居心地も良い。給料も、高くはないけれど、新卒1年目と考えると、他社と比べて低すぎるということもないと思う。
休みの日は学生時代の友達と遊んだり、趣味の文章を書いたり、漫画を読んだり……平和の極みである。
こんな恵まれた生活を送れていること自体が、とっても幸運なことじゃないか!

たった1回2万円払うことなんて、この大きな幸運のなかの出来事と考えたら、大したことじゃないかもしれない!
……という風に考えないと、とてもじゃないけど立ち直れない。
心のダメージを少しでも軽減すべく、この数日は自分の恵まれているポイントを、必死で数えて過ごしている。