わたしと二人の妹は、週に一度、夕飯が豪華になるその日を楽しみにしている。木曜日は、母方の祖母がやってきて、渾身の手料理を振舞ってくれる日だ。やっぱり、おばあちゃんの料理は美味しい。

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わたしは三姉妹の長女で初孫だったため、生まれたばかりのときは、祖父母に世話をしてもらい、それはたいそう可愛がってもらっていたらしい。実家に里帰りした母は、赤ん坊だったわたしにお乳をあげるとき以外、祖父母に任せっきりにしていたと聞いた。

なんと甘やかされて育った母だろうか、とわたしは半ばあきれた。わたしも母になって、実家に帰ったときは、怠惰な生活をするようになるだろうか。物心がついたころには、かなりの頻度で祖父母の家に行き、テレビやアニメを見ていたのを記憶している。祖父母の家に浸かっていた、というのが正しいのかもしれない。

戦後に生まれた祖母は、昔の人(といったら失礼かもしれない)で、母が育った祖父母の家では、祖父は外で働き、祖母は専業主婦(ときどきパート)をしていたらしい。主婦歴約50年、キッチンに立つ祖母の所作は滑らかで、手際がいい。わたしはまだ、作れる料理はほんの数品だけれど。いつかはわたしも、祖母のようになれるだろうか。

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そんなキッチンで見る祖母の背丈は、心なしかここ最近、見るたびに小さく縮んでいっているような気がしている。わたしが祖母の隣に立つと、それがいっそう、意識される。昨年、祖母の弟の訃報を聞いたときには、生きてるって当たり前じゃないんだな、と思った。そういう齢に、祖母は達したんだな、と同時に感じた。

春休み、祖母と祖父とわたしの三人で、温泉旅行に行った。祖父母が寝ている横で一人歌い続けたカラオケも、祖父と初めて飲んだカシスオレンジの味も、心ゆくまで堪能した温泉も、濃いピンク色の河津桜も。わたしは全部、全部、忘れない。今まで旅行と言えば、家族全員で行くものだったから、今回のように祖父母とゆっくり向き合える時間は新鮮で、希少だった。できることなら、母にも、二人の妹にも、一人ずつ旅行に行ってもらいたい。きっと、ずっと思い出に残る時間になるはずだから。

祖母の人生は壮絶だったと、母を通して聞いたことがある。結婚した当時、お姑から受けた嫌がらせやお姉さんとの仲たがい等、色々辛かったことを聞いたけれど、わたしは、今、祖母が幸せでいてくれたら、と思う。もちろん今でも、日常の些細なところで嫌なことや不安なこと、計り知れないほどたくさんのことを抱えているだろうけれど。それでも、わたしができる限りのおばあちゃん孝行はしたいと思っているよ。

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祖父が言うには、最近は祖母は木曜日の日には、朝からキッチンに立ちご飯の仕込みしてくれているらしい。今もなお週に一度うちに来てくれるのは、母の家事の負担を減らすためでもあるのかな……なんて考えるようになった。しんどいときは無理しなくてもいいからね。

これまでの長い人生の中で、色々なことを経験してきた人生の大先輩。料理の仕方、着物の着方、生きているときの心構え……。まだまだ祖母に教えてもらいたいこと、祖母から学ばなければいけないことが数多くある。だからまだ、元気でいてね。

いつもありがとう、おばあちゃん。普段は気恥ずかしくてなかなか言えないけれど、とても感謝してます。また遊びに行くからね!