私が、これまで生きてきた中で、最も幸運だと思う出来事。それは、小学4年生のときまで遡る。
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小学4年生の春、私は家族で夢の国へ遊びに行った。このときが人生3度目であった。以来、夢の国を訪れる機会は訪れていない。
乗り物やショー、食事、グリーティングなど数ある夢の国の楽しみの一つが、ショッピングだ。私は、ダッフィーフレンズのグッズを買うのを楽しみにしていた。2回目、小学1年生のときに買ってもらったダッフィーのぬいぐるみは、毎晩ベッドで一緒に寝て、くたくたになるまで大事にしていたくらいだ。このときは、新たに仲間入りした子のグッズを買うつもりだった。
しかし、当時目当てのショップは、整理券を配布し、順に案内していくという形をとっていた。そうしないと、混雑し混乱を招く恐れがあるほど人気のショップということで、整理券をもらうだけでもかなりの行列に並ばなくてはならなかった。
だからといって、諦める私たち家族ではない。せっかく夢の国に来たのだから、そこでしか買えないグッズを買って帰りたい。私たちも、他の多くの客と同じように、整理券待ちの列に並んだ。
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どれくらい並んだだろうか。何しろ10年ほど前の記憶なので所々定かではないのだが、しばらく並んでいると、1組の外国人の家族に声をかけられた。
おそらく日本語ではなかっただろうから、彼らが何を言ったのかはわからないし覚えていないのだが。
なんと彼らは、持っていた整理券を全て譲ってくれたのだ。
どういう事情があったのかは私たちにはわからないが、とにかくありがたい。彼らのくれた整理券のおかげで、当初の予定より遥かにスムーズに目当てのショップへと入店し、買い物をすることができたのだから。
なぜ、行列の中から私たちに声をかけたのだろうか。まず、理由の1つになるのが、人数だと考えられる。この整理券というのが、1人につき1枚充てられるもので、私は両親と自分の3人家族なので、3枚必要だった。ちょうど、この外国人の家族も3人連れだったのだ。もし、このとき誰かがトイレ等で列を抜けていたら、まず私たちを選びはしなかっただろう。
さらに、両親とも知らない人に声をかけられやすいタイプだったというのも関係しているのかもしれない。
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この経験は、約10年経過した今でも色濃く印象に残っている。私たちは、本当に運が良かった。
いや、運が良かった、という言葉で片付けて良いものか。
きっと礼は伝えたはずだが、彼らがしてくれたことを思えば、もっとちゃんと言いたかった。
早く買い物にありつけただけでなく、見ず知らずの家族に、何らかの事情で不要になった整理券を譲ってくれた厚意こそが、私を幸せな気分にしてくれた。
あのときの家族が、このエッセイを読むとは到底思えない。それでも、今なお感謝している、この気持ちが届けばいいなと思う。
これをきっかけに、他人にしてもらった親切を覚えている素晴らしさを実感し、自分も同じように人に親切にしたいと思った。
あの日の私たちは、間違いなく幸運な気持ちにしてもらったから。