社会人になってから、仲の良い彼、彼女らとの関係性を表現しようとすると、いつも頭を抱える。休日、余暇を一緒に楽しむ人。人生について深く語り合える人。定期的に近況を報告し合う人……。

思い浮かべると、同世代もいる一方で、年が相当に離れている人が増えた。下は学生もいれば、上は親、祖父母の世代。知人というには遠いが、「友達」とはニュアンスが少し違う気がする。
ただ、共通して言えるのは、誰もが人生の「先輩」として尊敬する何かを持っている。

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共働き家庭で育ち、長女で年下の面倒を見る機会が多かったからか、子どもの頃から世話役を任されることがしばしばあった。
中学生時代、所属していたバレーボール部では、新入生に部の規則や練習メニューなどを指導する係を担った。後輩が試合に出れば、心身のサポートに努めた。高校に進学して始めたアルバイト先では、当初、最年少のホールスタッフだったのが、どんどん後輩ができ、気付けば学生アルバイトの指揮を執っていた。楽しく働いてほしい一心で、働きやすい環境づくりに徹した。プライベートで食事に誘ったり、誕生日の子がいれば飲み会を企画したり、積極的に交流を図った。会社に入ってからは、後輩を家に呼んでは手料理を振る舞った。悩んでいる素振りを見せれば、相談に乗るよう話しかけた。

なんだかんだ、頼られるのが好きなのだ。

気質は変わらないが、いつからか「私は人に何かを教えたり、引っ張ったりする器ではない」。そう思うようになった。
周囲に、たくさんの先輩ができた証拠でもある。

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たとえば、悩み事があると真っ先に連絡する40代の彼女は、3人の子を育てながら居酒屋を営んでいる。最初は店員と客の関係に過ぎなかったが、度量の広さや前向きな視点に引かれ、気が付けばいちばん頼りにするようになっていたし、女性として、母として、憧れている存在だ。
職場の上司の紹介で知り合った、別の40代女性は、とにかくパワフル。気持ちが落ち込んでいても、彼女といれば不思議と元気になる。若くして離婚後、年上の優しい男性と再婚。子どもがほしかった時期もあったそうだが、「1回きりの人生、楽しまないと!」と、キャンプや温泉巡りなど幅広い趣味で休日を充実させている。世間で話題のモノ、コトはすぐに試し、常に新しい娯楽を探している様子。チャレンジ精神に満ちあふれている。
はたまた、会社の後輩だった20代女性は、大好きなモノづくりを仕事にしたいと退職し、作家としての道を歩んでいる。彼女が生み出す作品には愛があり、懐の深い人柄がにじみ出ている。かつては先輩として、「何かしてあげなければ」「お手本でいなければ」という意識があったが、私より先に結婚、出産を経験し、夢に向かって力強く生きる彼女に助けを求める場面もでてきた。

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改めて、1人1人の人物像を表すと、誰かに自慢したいくらい、魅力的な仲間ばかり。人に恵まれるほど、幸せなことはないだろう。

そんなわけで、「私は先輩」と胸を張って言えなくなった。

30歳を前に、こんなんでいいのかと自分に喝を入れたいところだが、これでいい。“我以外皆我師”。誰もが人生に学びを与えてくれる、先輩だから。