美容部員時代、真面目で完璧主義な性格ゆえに、適応障害になり心身を壊した私。

休職中、あらゆる人から「考え方を変えたら生きやすくなるよ」「(サンリオのキャラクターの)マイメロの人格を宿したほうがいいよ?」と、“脱・真面目!脱・完璧主義!”を推奨するアドバイスをたくさん貰った。

だが、正直どのアドバイスも私にはしっくりこなかったので、こうして休職から3年以上経っても真面目で完璧主義なまま、生きづらさを抱えていた。

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先日、金曜ロードショーで映画『プーと大人になった僕』がテレビで放映された。
ディズニーキャラクターの“くまのプーさん”には思い出がある。

バレンタインデーが誕生日の私は、10歳の誕生日の時、バレンタインデーデザインのプーさんのぬいぐるみを両親にプレゼントしてもらったのだ。
“くまのプーさん”の物語こそ知らなかったが、その頃から、オスの飼い犬を「ちゃん付け」で呼ぶ要領で、親しみを込めて「プーちゃん」と呼んでいる。

大人になった私が抱きかかえても、新生児くらいのサイズ感のプーちゃん。
ころんとしたフォルムで淡いイエローカラーで触り心地は未だにふっわふわ。

18歳から、住まいを九州から関東、関東から関西へと拠点を移しても連れてきていたプーちゃん。
しかし、アラサーの仲間入りをした私は「ぬいぐるみを部屋に飾るのはいかがなものか」と思い、洗濯ネットに入れたまま、そっと閉まっていたのだった。

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映画の話に戻り、ざっくりあらすじをお伝えしようと思う。

少年時代のクリストファー・ロビンはくまのプー達と仲良く遊んでいたのだが、寄宿学校に入学するのを機に彼らとお別れをした。
大人になった彼は結果を求める仕事人間になってしまい、忙しい日々を過ごしていたある日。
少年時代に遊んでいたプーが突然現れ、大切なことを思い出させてくれる......といった話。

あまりにも天然でドジっ子なプーの描写に「共感性羞恥(=他人が恥をかいたり失敗したりする様子を見て、自分まで恥ずかしくなること)」の嵐だった。

少し映画の中の些細な描写に触れるが、大人になったクリストファー・ロビンがカッとなって、プーに対して「おバカさん!」と言い、そのあと、プー自身も「ぼくはおバカさんだからぁ」なんて言うシーンもあった。

幼少期に“くまのプーさん”と過ごしていたところは、今の私もクリストファー・ロビンと一緒。そして、大人になってから生きづらさを抱えていることも。
「いかに真面目に目の前のことを淡々とこなさなければいけないか」に注視してしまっていて、常に結果を求めてしまっている。
映画を通して、些細なミスを受け流したり、ボーッとすることにこそ意味があるとするプーの「マイペースさ」が私には欠けているということに気付けたのだった。

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先日引っ越した際に、区役所へあらゆる手続きをしに行った時のこと。

「あらゆる制度をここまで調べ尽くしたんだから、今日全部申請ができる!」と思っていたら些細なミスがあり、当日に申請が出来ずに落ち込んだことがあった。

その時、区役所の職員から「人間は100%完璧じゃないから、少しずつ色んな人の手助けを受けて、100%を目指せばいいんですよ。案外、何にも知らないで生きてる人のほうが幸せかもしれないですね」なんて言われた。

その言葉に救われたタイミングでこの映画を見たからこそ、自分の生きづらい思考に合点がいった。
映画のプーのようにマイペースで「おバカさん」でいることも「幸せな生き方」かもしれない。10歳の時にプーちゃんに出会っていなかったら、この映画に興味を持っていなかっただろう。

久しぶりに洗濯ネットから出したプーちゃんに「大切なことに気付かせてくれてありがとう」とつぶやいた。