わかっている。私がいけないことくらい。
でも、どうしても温もりを求めてしまう。罪深い私。

令和5年3月5日、私は出会って7年、付き合って6年の彼と結婚した。
夫は料理が上手で、優しい。職場までよく迎えにきてくれて、休みの日は、いろんなところへ連れて行ってくれる。気遣いもできる素敵な人だ。
でも、私は夫に言えない秘密を抱えている。
元彼との縁を断ち切っていないことだ。

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ある日、私は体調を崩した。崩したと言っても熱が出たわけではなく、喉が痛く、体が重く、節々が痛く、だるい感じがする程度で、仕事や日常生活はなんとかこなせる状態だった。でも、しんどいことにはしんどくて、誰かに励ましてほしくなった。これは私の悪いくせ。弱っている時に、誰かにすがりたくなってしまう。
家の人に体調が悪いと伝えると、仕事を休むべきだ、持ち帰りの仕事なんてせずに寝なさい等、余計な心配をかけてしまう。きっと夫も同じ反応をするだろう。仕事に穴を空けると後々仕事量が増え大変になるし、なんとか動けるから余計な心配もかけたくない。
そこで私は、遠くに住む元彼にメッセージを送る。
「体調悪いよ。喉痛い。めっちゃだるい。風邪ひいたかも。でも仕事休めない。最近忙しくて大変」
すると元彼からすぐに返事がくる。
「わか、大丈夫かい?付き合っていた頃は、あんまりそういう弱音吐かなかったよね。我慢してたのかな?あんまり無理しないでね。わかは、がんばり屋さんなんだから。会いに行って薬とか渡せたらいいんだけど、もうそれはできないから、ここでこっそり応援してるね」
そのメッセージを見ると、それだけで元気が出た。

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私は、元彼が自分のところに会いにこないことをわかった上で、ただ励ましの言葉が欲しいだけで、別れて終わったはずの元彼にメッセージを送るのだ。
どう考えても、私の甘えだ。優しい言葉をかけてくれる相手を選んで、都合良くメッセージを送る。ダメだってわかっている。元彼にも夫にも失礼だって、そんなこと頭ではわかってる。でも、やめられない。一度やめようと試み、元彼には連絡を取らずにいた。しかし、逆に元彼が私にメッセージを送ってくる。その「久しぶり!元気かい?無理しすぎてない?」のメッセージについ応えてしまう私。意志が弱い。やめようと思っていても、優しくされるとやめられなくなってしまう。
中途半端につながって、それを私は心の安定剤にしてしまっている。
ある種の薬物依存症。
これが、他の人にバレたらどうなるのだろう。これは罪なのではだろうか。
どこか不安に感じることもありつつ、それでも私は優しい言葉を求めて元彼と細々繋がる。

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夫はいい人だ。優しくで大らかで、私のわがままだって聞いてくれる。人目を気にせず手を繋いで歩いてくれるし、わかの好きなやつ買っといたよって好みまで覚えて、お菓子やジュースを買っておいてくれる。
でも、あまり私の話を聞いたり、自分の話をしてくれたりはしない。聞いてほしいことや共感してほしいことには無頓着だ。その部分を私は元彼で補おうとしている。いや、実際に補ってもらっている。
元彼が、大人になって、私の立場をわきまえて会いにこないことをいいことに、言葉だけ都合よくもらう。
ずるいなぁ。私はなんてずるい女なんだ。いつか私はバチが当たるかもしれない。むしろ、この体調不良はバチが当たったのかもしれない。
でも、たとえそうだとしてもきっとやめられないのだろう。そう思う。
何かをきっかけにやめられるとしたら、私の心の安定剤を他で補えるようになった時だと思う。
これから先、いろんな経験を積んで、私は他で心の安定剤を手に入れたい。
その時は、元彼に心からのありがとうを伝えて、さよならをするんだ。
お互いに幸せだったと、これからもっと幸せになろうと言って。
そして私は、夫と共に素敵な家庭を築いて、目標に向かって切磋琢磨し、たくさんの幸せを積み重ねていこう。