26歳、既婚、子ども無し。これが私のプロフィール。
結婚するのが当たり前ではなくなった昨今にしては、結婚は早い方かもしれない。家族想いの優しい旦那さんとの穏やかな2人暮らし。傍から見たら幸せな、安定した人生。
そんな私が、見たいけれど見られないドラマがある。不倫のドラマだ。

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不倫行為を肯定するわけではないけれど、大人の男女が互いに恋焦がれる姿が熱をおびて演出されているストーリー。そういう映像を見たら、結婚を機に、心の奥に無理やりしまいこんだ、私の悪い恋愛体質がひょっこり顔を出しそうで、とてもこわい。

思い返せば、小学生のときから、適当な男子を自分の心の中で恋愛対象として置き、席替えで近くなったとか、今日は話ができたとか、毎日のちょっとしたことを恋の大事件のように騒ぎ立てていた。学生時代も、恋愛中は恋愛が最優先。好きな人ができると、頭の中は途端に恋愛のことでいっぱいになり、周りの女性は全員敵視、自分の友人関係もおざなりにしてしまう。大学入学後すぐに彼氏ができたときに、友人に恋愛上手と言われたことがあるが、他の日常生活とほどほどに両立できていない時点で、「恋愛下手」だと自分では思う。

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2年前、今までの人生の中で最も大恋愛だったと思う恋をした。会社の先輩。一目ぼれだった。お互いに好意があり、初めて食事に行ったあとに、カラオケでキスをした。そのまま先輩の部屋に行った。3か月後に彼は休職して1年間留学に行くことが決まっており、期限があるという焦りが先行して、3か月間、私たちは急スピードで仲を深め、必死に愛し合った。しかし、当時お互いにパートナーがいた。良くないことだとは分かっていても、止められなかった。留学に行ったら会えなくなってしまうというのが、とてつもなく切なかった。ただただ恋に溺れている時間。一方で、冷静に状況を分析している自分もいて、自分が今理性を失っていることも分かっていた。この恋が今後どうなるかわからない、帰国後も彼が自分を好きか分からないという現実的なリスクを理解していた、悪賢い私は、その間パートナーとは別れなかった。別れないまま、とにかく甘い時間を吸い尽くした。つまり私は、もはや不倫とほとんど同じことをやってしまった苦い経験がある。

その先輩とは、留学への出国を空港で泣いて見送ってから、一度も会っていない。彼は1年後に帰国して復職した後、超エリート企業に転職を果たした。結婚は生活の延長だと決断した私は、結婚生活にふさわしいと理性で判断したパートナーと結婚した。留学を踏み台に、キャリアのステップアップを遂げた彼の華やかな様子とは対照的に、私は彼の声を思い出して泣き、胸をつまらせながら、恋の消火作業に努めてきた。頭で納得して決心した結婚は、家族に祝福され、幸せで穏やかだけれど、心の中に、もう2年会っていない人との過去の記憶が潜んでいる。

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不倫ドラマなんて見たら、きっと、悪いことをした自分への自己否定感や罪悪感をおぼえると同時に、恋をしたときの燃え上がるような気持ちを思い出す。不純な行為に目を背けたくなる気持ちと、純粋な恋愛感情を良いなと思う気持ち。

パートナーに嘘をついてでも、目の前の好きになってしまった人との甘い時間を1秒でも多く手に入れたいと願う悪女の感情が、いつの日かどこかで再発してしまったらと思うと、もう恋愛ドラマも見る勇気がない。一度欲望のままに過ちを犯すと、その後何年も苦しむのだ。自分本位な悪いことは、するものではない。