一人暮らしを始めて約2年半が経った。
まだ2年半しか経ってないのか、と思うくらい今の暮らしはとても心地がいい。
「一人暮らしをすること」はずっと、私の夢だった。

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私が約2年半前まで暮らしていた実家ではあまりいい記憶が正直ない。
子供の頃、私は買ってもらった机には片手で数えるくらいしか座れた記憶がなく、妹の机は買ってもらったにも関わらず、ずっと段ボールから出されぬままだった。実家に行く度、その段ボールを見ると毎回本当に泣きたくなる。私たち2人とも心底、机で勉強がしたかった。でもそれは叶わない家庭だった。

友達の家に行くと机に漫画の付録のシールを貼っていたり、ぬいぐるみを置いていたり。友達が話す「机に座るけど全然勉強してないんだよね~」の言葉が本当に羨ましくて仕方なかった。

友達を家に招いたことは小学1年生の時に一度だけあった。その時は母が私や友達にオムライスを振舞ってくれ、それがすごく嬉しかったことを20年以上前なのに覚えている。でもこの実家ではその経験はない。だから友達の家でクリスマスパーティーをしたこと、友達のお母さんがホットケーキを焼いてくれたことが嬉しくて、だけど羨ましくて仕方なかった。

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机で勉強できなかった私たちは、いつも母が買い物をしている間に車内で待ちながら自分のランドセルを机代わりにして宿題を片付けていた。中学、高校生になっても机で勉強ができなかったから学生カバンが机代わりなのは変わらなかった。

幸い、試験期間中は最後まで教室に残って勉強ができたり、図書館で宿題をすることができたりしていたから良かったと思う。机が無かった反動なのかは分からないけど、勉強をするのは好きな子どもだった。だから高校にも短大にも推薦で入学できたのかもしれない。それはその当時の私の頑張りに感謝したいと思う。

ずっと行きたかった県外の大学進学を死ぬ気で反対され、その時から一人暮らしを始めるまでずっと「一人暮らしをすること」が私の一番の夢だった。だから、両親に迷惑をかけないように短大の学費は自分ですべて賄い、それとは別に一人暮らしを始めるための費用として100万円を短大生時代に貯めた。

社会人になり一人暮らしをすぐに始める予定が様々なトラブルが起こり、結局始めるまでに相当な時間がかかってしまった。何でも前向きに自分の力だけで頑張ろうとしても命を懸けて止められると、やっぱり娘の私は無力なんだと何度も思い知らされた。

だけど、時には家族で旅行に出掛けたり、美味しいものを食べたり、実家にいたからこそ出来た思い出もたくさんある。

喧嘩ばかりの両親だったけど銀婚式のお祝いで旅行を私たちからプレゼントしたこともあったし、大人になってから多くの場所を家族で訪れることができた。それだけは、本当に楽しい思い出を作ることができてよかったなと思う。

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そして、やっとの思いで2年半前に一人暮らしを始めることができた。
ほとんどが自力だったから、とりあえずで購入した折り畳みのテーブルと折り畳みのイス。
ノートパソコンが1台乗るくらいの大きさだけど、やっと自分だけの机ができたことが何より私は嬉しかった。ずっと机で勉強したいという夢が叶った時ははぁ、と嬉しいため息がもれた。

この机のおかげで私はFP試験も乗り越えられたし、アロマテラピー検定にも合格できた。
そして、この机上でいつもノートパソコンに向かって今でもエッセイを書き続けている。

友達を自宅に呼んだ記憶の最後は7歳だったけど、一人暮らしを始めてからは大切な友達を自宅に招くことができた。私の家で買ってきたお菓子を食べながら時間を気にせずお喋りをしたり、作った料理を持ち寄ってクリスマス会をしたり。
「なんか、もぴの家いつ来ても綺麗にしてるし落ち着く~」とラグでくつろぐ友達を見るだけで私まで本当に嬉しくて些細な事だけど、夢が叶ってるなぁと感じる。

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机で思う存分、勉強したいな。
友達を家に呼んでみたいな。
自分で作ったご飯を食べたいな。
自分で選んだ服を着て出かけたいな。
湯船に浸かってお風呂に入りたいな。

上に挙げた夢は、周りからすれば「そんなこと」と思われるくらいどれも当たり前の日常だ。だけど、そのどれも私は叶う事のない子供時代だった。でも、一人暮らしを始めたらきっとどれも叶うだろう。だから私の夢は一人暮らしをすることだったのだ。

今は子供だった私が羨ましいと思うくらい、当たり前の生活ができていると思う。
昔のことを思い返すと苦しいけど、子供時代の当たり前の願いが叶うことが無かったからこそ、私は勉強が好きなのかもしれないし、掃除も料理も教えてもらっていない割にはちゃんとしよう、という気持ちが働いて人並みには丁寧な暮らしができているのかもしれない。

子供だった私が抱いていた小さくて些細な夢はまだまだたくさん残っている。当たり前の日常に感謝しながらも、大人になった私が1つずつ、かつての私の夢を叶えていけたらいいなと思う。