私史上最悪の1日はいつか、と問われて、私はあの日を挙げずにはいられない。
ゴールデンウィーク初日、少々風が強いが、よく晴れた日の午後のことだった。
気になる男性と近所の公園に遊びに行き、小規模なピクニックをした。私たちの周りを駆け回る子供や、愛犬連れの家族などがいて、周りは朗らかな雰囲気で包まれていた。

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そんな中、私は公園の木に登ってしまった。
元々木登りが得意だった私は、春の陽気に誘われ、ひょいひょいと枝を掴み、高いところへと登っていく。
そろそろ降りなければいけない高さに差し掛かった時、つるりと手が滑る。
途端、左足に激痛が走り、ぼてっと尻餅をつく。
痛みのある左足を目視すると、なんと足首がくの字に曲がっていた。
これを彼に見せるわけにはいかない。
痛さと動揺を上回る羞恥心で、なんと私は、自分でその足を真っ直ぐに戻した。
駆け寄ってきた彼に、「多分、足折れた」と伝えると、彼は目を見開いて驚きながらも、私をお姫様抱っこして平らな場所へと連れて行ってくれた。
そこからはもう、痛い、痛い、痛い!しか考えることができなかった。眼前に広がる景色の色が黒くなったり緑になったりしていた。

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ひたすら痛みを訴える私を横目に、彼は公園管理者と救急に連絡してくれた。
彼の行動の速さに心が落ち着いていく。
救急隊員が到着する頃には、私の動揺はおさまり、何があったかを詳細に伝えることができた。
私の左足は脱臼骨折、しかも靭帯まで切れていた。間違いなく人生で1番の大怪我である。
楽しく始まったはずの公園デートが私のせいで最悪の日になってしまった。
しかし、そんな中でも彼はずっと優しかった。
緊急入院の準備や、私の家族への連絡、病院とのやり取りを嫌な顔ひとつせずこなし、ずっと心配していてくれた。彼が、本心から私を想ってくれていると分かった。
また、こんな惨事に、冷静に対処してくれる彼になら、身を任せられるような気がした。
その晩、私は彼に正式にお付き合いを申し込み、快諾を得た。
人生で1番の大怪我をして、人生で1番痛くて最悪な日。
そんな日にも隣にいてくれた彼。
これからどんなに最悪な日があっても、彼となら乗り越えられる気がする。
春に起こった最悪な1日に自覚した彼への尊敬と恋心は、これからどんな風に育っていくのだろうか。

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この日が私史上1番最悪な日であったことに間違いはないが、少しの幸せが、いや、最悪と同じぐらいの幸せがこの日に起こったこともまた、間違いのない事実である。
入院生活が続く私は、彼に迷惑をかけてばかりだし、恋人らしいことは何ひとつできていない。
でも、彼の私に対する気持ちはわかりすぎるほどにわかっているし、私から彼に対する気持ちもあの日からずっと変わっていない。
むしろ、入院生活を励ます彼からのメッセージひとつひとつが、携帯の画面に映る私の表情をコロコロと変えてしまう。
これから私は、私たちは、この日を超える最悪な日に出会うかもしれない。それでも、彼となら、彼がいれば大丈夫な気がする。
どうか、最悪から生まれた幸せが大きく育ちますように。