老廃物、疲労、ストレス、デジタル…。
気付かないうちに、心身には何かが溜まっている。
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デトックスしたい。衝動に駆られた私のオフは“リセットデー”。朝、早々にブラックコーヒーと、はちみつをかけたギリシャヨーグルトを胃の中に流し込む。胃腸が動き始めたところで、ヨガとランニングで体のエンジンをかける。後は果物と、カフェラテやココア、甘酒など満足感のある水分で空腹を紛らわせ、終日、固形物を食べずに過ごすだけ。体内の循環が改善されるのか、体が軽やかになって気分もいい。時間とお金が許せば、リンパマッサージを受け、普段よりちょっぴり長く湯船に浸かって効果を最大化させる。
あとは、スマートフォンをなるべく見ないよう、手元から離せれば上出来。脳や目が疲れるし、SNSや大量に飛び込んでくる情報と距離を置いた方が、心穏やかに過ごせる。誰かが人生を謳歌する姿を垣間見たところで気分が上がるなんてほとんどない。そんな1日が終わる頃には身も心もスッキリして、翌日、不思議と活力がみなぎっている。
少々ストイックだが、自分のパフォーマンスを高めるために必要な時間。完璧にやり切るために我慢は鉄則だ。トースターでかりっと焼き上がったパンが放つ、香ばしい香り。冷蔵庫を開けると目に入る、街の洋菓子店で一目ぼれして購入した焼き菓子…。家族の食事を準備するため、1日1回以上立つキッチンには、食欲をかきたてるものであふれている。家事の合間にすきま時間ができると、ついスマートフォンをチェックしたくなる。たくさんの誘惑と闘いながら、リセットできた時の快感を得るため、何とか欲求を抑える。
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最初は、ダイエットが目的だった。中学時代の部活動で過度な減量を強いられ、拒食になった。当時、身長148センチだった私の体重は、一時期30キロまで落ちた。引退後、反動で過食が始まった。高校2年生の時には倍の60キロ近くまで増え、人生最大の体重を記録した。何度もダイエットを試みたが、思春期の食欲は止められなかった。太っている自分に自信が持てなかった。幸いにも受験期、勉強に打ち込んでいると自然に8キロ痩せた。BMIでいう普通体重になったものの、世間的にはデブ。どんな服も着こなせる、すらっとしたモデル体型への憧れは強くなる一方だった。
大学生になると、食事する量も時間も自由になり、大好きなパンやお菓子を食べる代わりにご飯を減らしてみた。痩せるどころか、一段とぽっちゃりした。
「●日で●キロ痩せるお茶」
「●ヶ月で●キロ減! ダイエット方法マニュアル」
「履くだけ!美脚になれるレギンス」
冷静になると信じがたいキャッチコピーに踊らされ、アルバイトで手にしたお金でいろんな商品も試したが効果は皆無だった。
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負のスパイラルに陥っていたダイエット難民が最終的にたどり着いたのが、1日、食を絶つ方法だった。ひょんなことから、朝食はコーヒーとグレープフルーツだけで済ませるようになり、半年がたったころ、5キロ減っていた。気付けば、痩せている人の食習慣や効果がありそうなダイエット商品、方法をスマートフォンで検索しなくなった。
自己流リセットデーは、ダイエット方法として正しいか問われると、私にも分からない。朝食を食べないと健康に悪いという説もあれば、その逆もしかり。ファスティングダイエットが流行する一方で、空腹の時間が長いと太りやすいとも耳にする。ただ、ひとつだけ言える。インターネットで簡単に情報が得られるようになった時代、最終的な答えは自分で決めるしかないのだ。自分のことは自分にしか分からない。それはダイエット法だけでなく、いろんなことに通ずる気がする。
30歳を前にした今、ダイエットが不必要な体重になっても、心身の健康維持のために続けたい。目的は変わっても、ようやく見つけた、私がなりたい私でいるための方法だから。