私が過去に一目惚れをしたのは、推しとの出会い、この一回きりである。

推しとの出会いは10年以上前。まだ小学生だったときのこと。クラスメイトの女の子が私に話しかけてきた。彼女は同じスポーツサークルに入っているメンバーで、比較的仲もよく話をしていた子だ。そんな彼女がこの頃好きになり始めたというアイドルについて私に教えてくれた。

「今日の歌番組に〇〇くんが出るの!かっこいいから絶対見てね!」

目をキラキラさせて話してくれた彼女は、目を輝かせたまま自分の席についた。

◎          ◎

その日の夜、言われたとおりに歌番組が始まる時間にテレビの前にスタンバイする。我が家のなかで特等席のポジションに座り、放送を見る。番組の後半、彼女が教えてくれたアイドルが出てきた。曲がかかり、歌って踊る姿に、私は一目惚れした。

なんてキラキラと輝いているのだろう。とても楽しそうで、彼女の目と同じくらいキラキラしている画面の向こうに吸い込まれた。私の目には、キラキラとしたエフェクトやフィルターがかかっていた。

彼女が話してくれたアイドルは、グループで活動していた。彼女が好きなメンバーももちろんかっこよかったのだが、私は違うメンバーに心を奪われた。一瞬にして引き込まれた彼らの世界。しかし、歌番組を見るまでは、誰かを熱心に応援することに否定的な考えを持っていた。特にアイドルを応援することに関しては、斜めに見ていたのだ。そのため、思いっきりファンになったとは公言できず、小学生の間はうちに秘めた思いとして熱を大きくしていった。

◎          ◎

中学になり、大きくした熱が爆発する。親に、テストでいい点数が取れたときはファンクラブに入会すると約束を交わし、見事ファンクラブに入った。中学生だからと、親の許可が降りずコンサートやイベントに行くことはできなかったが、テレビの出演情報がメールで来るたびに嬉しかった。録画レコーダーのリモコン権を奪い、レコーダーに入っている番組のほとんどが、推しが出ている番組だ。CDやDVDの発売が決定すると、親に頼んでCDショップへ連れて行ってもらい、初回限定盤を予約。CDやDVDを予約すると、前日に受け取れるので、発売日前日は、学校が終わったその足でCDショップへ駆け込んだ。友人からは、ここまで熱量高く応援している人は初めて見た、と言われるくらいだった。

初めて生で彼らを見たのは高校生の時。イベントに行くことが決まり、田舎から東京まで夜行バスで行く計画を立てた。テレビで見ている彼らはもちろんかっこいい。なんとも表し難い空気感も大好きになっていた。そんな彼らに実際に会えるとあって、興奮が止まらない。親に反対されたが、強行突破で彼らに会いに行った。

それからコンサートやイベントにはできる限り応募し、当たればそれを最優先事項として予定を組んだ。

◎          ◎

大人になった今も、彼らを推しとして応援し続けている。かれこれ10年以上経ち、CDやDVD、グッズは部屋の一部を占領するくらいまで増えた。小学生の時、クラスメイトから紹介されたアイドルと歌番組がきっかけで、一生の推しに出会って一目惚れをした。一目惚れなんてするわけがない、する要素がないとしか思えなかった私が、人生でたった1度だけ一目惚れをした瞬間だ。J-POPの歌詞にある、「見とれてしまう瞬間」や「輝いて見えた」などの表現がぴったりと当てはまっていただろう。

当時の記憶はおぼろげになりつつある。それでも、彼らに一目惚れをした瞬間のきらめきと心が動いた感覚は忘れない。もし、推しに出会わなかったら、私の人生はどうなっていただろうか、そのくらい大きな影響を与えてくれた存在でもある。一目惚れをすることが運命のごとく決まっていたのだろうか。今もなお心の支えとなり、生きる意味となり、私を作る一部となっている。たった1度きりの一目惚れではあるが、ここまで大きく人生に関わってくるとは誰が想像できただろう。

今も応援する推しに、一目惚れをして、一瞬で熱烈な思いを燃やすファンとなった私。ここまで長く好きでいられる存在に一目惚れしたことは、ファインプレーと言えるかもしれない。