「恋人候補を探すなら、最初に出会った時にピンと来ないとダメだよ」
と、マッチングアプリを使っていた頃によく言われた。

最初の印象があまり良くなくても、二度三度と会う回数を重ねると魅力的に思えてくる、というパターンは少ないのだそうだ。
仮に、会う回数を重ねて好きになっていったとしても、そこから関係長続きするパターンはもっと少ないらしい。
逆に言えば、会ってすぐにピンと来た相手同士は、その後結ばれる確率が高いという。つまりは、一目惚れ、直感で選ぶということがベストな選択に繋がるということなのだろう。

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それでいえば、私にも思い当たる節がある。

赤のボーダーカットソーだ。
今年の春、ふと思いついたのだ。赤と白のボーダー柄の服が着たいな、と。
突然思いついたのだけど、それからはずっと赤のボーダーカットソーのことしか考えられなくなった。

居ても立っても居られずにネット検索したら、これがなかなか見つからない。
ショッピングモールへ出掛けてお店を次々に巡っても、理想的な赤のボーダーカットソーが見つからないのだ。
どうやら今年のトレンドからは外れたアイテムだったらしい、と探しながら気づき始めた。

それからは、しばらく赤ボーダーを探す日々が続いた。
ショップに入って、運良く赤と白のボーダー柄が見つかっても、ゴールにはならない。
なぜか「うーん…」と唸ってまた商品棚に戻してしまうのだ。

理由は、挙げようと思えば色々ある。

襟元の形が好きじゃない。
素材の質感がしっくりこない。
ちょっと白地が透けすぎている。
赤色の加減が好みと違う。

でも、ひっくるめて言ってしまえば、「ピンと来なかった」のだ。
どこかで妥協して購入してしまうこともできたのだけど、なんだかその時は真剣で、「一目惚れできないものは今後絶対愛用できないから」と思い、運命の出会いを探し求めていた。

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そして、出会ったのだ。

アパレルというよりは、雑貨屋というイメージが強いショップだった。お店を通り過ぎようとした瞬間、チラッとその色が目に留まったのだ。
棚に並べられた布地の、赤と白の配色。

まさか、と思いながらも近づいてみると、明らかにそれは畳まれた洋服だった。
ここ、洋服も売っているのか、と驚きつつも、逸る気持ちをおさえて服を広げてみる。

広げる直前の、服を手に取った瞬間に、もう気持ちは決まっていた気がする。「ピンと来た」のだ。
広げてみたところ、それは理想的なシルエットと生地感の、赤のボーダーカットソーだった。
試着室に駆け込んだ時の興奮は忘れ難い。
君をずっと探していた!と、服ごと自分を抱きしめたくなった。

以来、購入した赤のボーダーカットソーは、私のワードローブのスタメンとして活躍している。
他にあまり理想的な服が見つけられなかったので、二、三日に一度は同じカットソーを着ているくらい、ヘビーローテーション中だ。
このカットソーのことは本当にお気に入りで、春服を一着だけに減らせと言われたら迷わず指名する自信がある。
できるだけ長く一緒にいたい、愛用品なのである。

なるほど、一目惚れにはやはりベストパートナーを選ぶ力があるらしい。

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先人のアドバイスからはちょっとずれた学びかもしれないけれど、大好きな赤のボーダーカットソーを着るたびに、直感を信じてよかったと思える。

人も物も、そんなふうにすべて一目惚れで選んでいけたらどんなに素敵だろうと思いを馳せつつ、きっとそれはさぞかし疲れる人生になるだろうと、カットソー探しの日々を振り返って苦笑してしまうのであった。