28年間の人生で一目惚れした回数はあまりにも多く、そしてその半数以上が私の人生に大きな影響を与えた。洋服、コスメ、レコードのジャケット、そして男性。一目惚れのシチュエーションはさまざまで、それぞれにそれなりの思い出もある。その中でも特にインパクトが大きかった一目惚れを決めるのは難しいが、つい最近お別れをした「真っ赤なソファ」も一目惚れだったことを思い出し、今回筆を執ることにした。

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真っ赤なソファというのは、文字通り赤一色のソファで、私が一人暮らしを始める際に購入した家具のひとつだった。ネットで家具を探していたところ、たまたまそのソファを見つけ、部屋の雰囲気をどうするかもまだ決まっていない中、そのソファを中心に家具を揃えようと決意。即決に至ったのだ。福島から栃木に移り住んだその日から、お別れをした数日前まで、ずっとずっと傍にあったお気に入りであった。

赤一色のソファは置いてあるだけで目を引くので、他の家具は白で統一、少しベージュ調も混ぜるなどして、自分の好きな空間作りを進めていった。頻繁に人が出入りするようなことは無かったが、居心地の良い部屋というのは、自分の精神衛生上とても大切なことであるとこの時改めて思った。

赤は興奮する色だからリラックスしたいときには向かない、なんて意見を聞いたこともあったが、正直私には関係なかった。どんなにリラックス効果抜群の色味でできた家具であっても、自分が気に入らなければ結局ストレスなのだから。それなら、自分の好きなように家具を集めて「自分だけのお城」を作る方が幸せだ。

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誰にも侵されない私だけの領域。その頂上に君臨する真っ赤なソファ。サイズは幅90センチほどで小さめであったが、デザインの良さに満足していたので、不便さはほとんどなかった。この先もずっと使い続けたいと思っていたが、ある時別れを意識するようになった。

ソファの劣化である。9年間使い続けたソファは所々傷みが見受けられ、購入当初の鮮やかさは既に無くなっていた。使い込んだことによって味が出てきたな、なんて思ってもいたが、傷みばかりは私自身にもどうすることができず、手放すことを決意した。

引き取ってくれたのは、よくお世話になっている「何でも屋さん」のご夫婦。とても明るく気さくな方達で、事情を話すとすぐに回収に来てくれた。

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「1人で栃木に暮らし始めた日から今日までずっと一緒だったので、いざ手放すとなるとやっぱり寂しいですね」。

と話したところ、「そうだったんですね。思い出の詰まった大切な一品、心を込めてこちらでお預かりしますね」と、優しい言葉をかけていただき、気持ちよくソファを送り出すことができた。

ソファが無くなった部屋はやけに広く、その虚しさは私の心を表しているようだった。その2日後に新しいソファが到着するまで、キャンプ用の椅子を引っ張り出して過ごしたのは良い思い出だ。

今となっては、新しいソファもだいぶ部屋に馴染み、新たな「自分だけのお城」が完成した。それでも私はこの先あの真っ赤なソファを時々思い出すのだろう。あんなに心惹かれた家具は、あのソファが初めてだったのだから。