「女の子らしいね」とか、「かわいいって感じよね」とか。
そういった旨の言葉を、私は二十数年の人生のなかで、何回も投げかけられたことがある。
悪いことではない、とその度に思う。
しかしそれを一度も嬉しいと感じたことはない。
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私を勝手に分類している感じが、私を枠に収めている感じが、なんとなく私を見下しているような感じが、私のことを何も知らないのに知っているかのように言っている感じが、気に入らない。
そもそも、そういう言葉を私に投げて、私にどう返してほしいのだろう。
「ありがとう」と返せばあなたはきっともっと「女の子らしいね」と思うだろうし、「そんなことないよ」と返せばあなたはきっとちょっと私を鬱陶しがるだろう。
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確かに私は、女性の身体で生まれ、自分を女性だと認識し、男性を好きになる。
まぎれもなく女性だ。
高校生の時、数カ月付き合った彼は私と別れた後に別の女の子と付き合った。それを知った私の女友達が、「『彼』君は、『私』ちゃんとか『新彼女』ちゃんみたいな、女の子らしいというか、かわいらしい子が好きよね」と言った。
周りにいた別の女友達数人は同意した。
衝撃だった。
私は新彼女ちゃんを、自分とは違ってとても「女の子らしい」子だと思っていたから。
女友達は、そんな新彼女ちゃんと私を同じカテゴリーにしていたのだ。
私はただ、自分を満足させたいだけなのだ。
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自分の好きな服を着て、自分に似合う化粧をし、できるだけ汚い言葉遣いと汚い所作を避ける。そういう自分が好きだし、それらが達成できると満足する。私にとっては重要だが、他人にとっては関係の無い、ただの自己表現だ。
その結果、私を「女の子らしい」とか「かわいいって感じ」を感じる人達がいる。
決して悪いことではない。
むしろ良いことかもしれない。
だから私は、それを武器にする。
あまり仲良くない人達の前ではひたすらニコニコし、気になる男性の前で笑う時は口元を隠し、 デートの時はスカートに体のラインが出るトップスを合わせ、重い荷物を運ぶ時は大げさに重そうに運びながら変わってもらうのを待ち、親ほど年の離れた人たちには敬語と丁寧な言葉遣いを徹底する。それが私のやり返しだ。
私の前では、あなたを「男の子らしく」、「かっこいい感じ」に、「サバサバしてる」ように、「尊敬されている」ように、「慕われている」ようにしてあげる。
しかし、おそらく私は、今までもこれからも、そういうカテゴリーから抜け出せることはない。
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低い身長、右頬にあるえくぼ、歴代の彼氏が皆「小さくはないんじゃない」と言った胸、お尻が大きいせいか括れたウエスト、高めの声、小さな手。
鏡を見る度に自分を「とても女性的だ」と思う。まるで「女」という漢字の元になったみたいなシルエット。
それでも私は声を大にして言いたい。
私は、すぐに理解できるほど簡単で単純な女ではない、と。
自分でも理解しきれないほど複雑なんだ、と。
あなたたちが思っているほど「女の子らし」くも「かわいいって感じ」でもないのだ、と。
私は、黒い服を好み、スカートをよく着るのは背の低さが理由でサイズの合うパンツが少ないからで、料理を練習しようとは思わないし、恋人への細やかな連絡は苦手だし、陰口は醜いものだと認識しているし、ヒョウ柄のスニーカーを履くし、でもピンクは好きで、車の運転は下手くそで、部屋の片づけは少し苦手だけど掃除は好きで、やたら写真を撮るようなタイプではないし、それでもたまには「クソ」と言ってしまうし、赤いリップが好きで、他にもいろいろ。
とにかく私は複雑なのだ。複雑なのは私だけじゃない。皆そうだろう。
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一人ひとりにいろいろがあって、それは複雑で、完全に理解されることはないし、自分自身でも理解しきれない部分があるだろう。
私はそれを認めたいし、尊重したい。だからあなたたちが私に投げる「女の子らしいね」とか、「かわいいって感じよね」といった言葉たちが、どれだけ失礼なのかを認識してほしいのだ。
カテゴリーは社会的だが、意味をなさず、つまらないだけである。
どうしてもカテゴライズしたいのなら、自分を見つめ直してから、私に理解できる言葉と証拠で説明してほしい。そしたら私はあなたを「つまらないって感じよね」とカテゴライズしてあげるからさ。