これは、私が高校1年生の時の話だ。私の通っていた高校は、自称進学校であり、目標は部活も勉強も頑張る文武両道の学校というキャッチフレーズを保持していた。の割には、スカートは短くて制服もかわいい。家からも近い。そんな魅力がに取りつかれて、私は取りつかれたように机にかじりついて勉強し、滑り込みで受かった。

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高校生活が始まって早々いろいろな事件(という名の青春)が起きるのだが、その一つに部活についての一幕があった。
というのも、私がこの高校を選んだのは書道部に入ることが目的であった。なぜなら、幼少期からずっと書道を続けており、もっとみんなに見てほしい!という気持ちと、書道を通じて友達が欲しいという考えからだった。

だけど、憧れの高校生活での書道部は、案外「こんなもん」だった。週に1度だけの活動に、喋って帰るだけの人もいる張り合いのない環境。これじゃ私が求めていたことと違う。部長だけを贔屓する赤リップのいい歳した50過ぎのおばさん顧問ともそりが合わず、毎日何のためにここに来たのか、やりがいを感じられない日々を送っていた。

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私は昔から刺激のない日々が嫌いで、毎日学校と家のシャトルランなんて大嫌いだった。その間なにか楽しいことが欲しかったし、それは恋愛でもバイトでも部活でも趣味でも何でもよかった。願っているだけでは誰もこの日々にきらめきをもたらしてくれる人なんていなくて、人生の華である貴重な高校生活はどんどん終わっていく気がした。

何か始めよう。いや、始めなくてはいけない。暗い部屋で一人、私はずっと飛び立てないまま高校1年の夏が来た。蝉の声はうるさくて、誰か私を一人きりにしてほしいとすら感じた。

そうだ、書道部をやめよう。ここを逃げ出そう。そして、どこか新しいところに行こう。「テンションが上がることをしなさい」とこの時母親に言われたことも起因して、私が一番きらめきを感じられるところに飛び立つスタンバイはすでにできていた。

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夏休みも半分過ぎてしまって、毎日朝方に寝て夕方に起きるという怠惰すぎる生活で無駄にしてしまった。後半は、もっと頑張ろう。そう思って、私は思い切って好きな人のいるテニス部のマネージャーに転部することにした。もうこんな生活なんてしていられない。

あの青春の代名詞のような運動部に私も入れてほしい。その道が決して容易でないことは従順承知だ。だけど、もっともっと自分の人生の意味を見つけたくて、思い立ったその日に友人を通じてテニス部のマネージャーの先輩に連絡を取ったのだった。

もう始まってしまった。だけど、私はもう行動したのだ。だから、何も後悔することはない。恐れることは何もなく、さっきまでうるさかった蝉の声が今は応援歌にしか聞こえなくなった。

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ミンミンミン・・と部屋中に響き渡る鳴き声が、どんどん大きくなっていく。「やるのか?それともいまのままか?」そう問い詰められているような気もした。

それからというもの、大変な日々を乗り越えて私は引退までやり抜くことができた。かけがえのない仲間や素晴らしい先輩・後輩にも出会えて、時々この経験があってここにいるんだという話を聞くと勇気をもってくれる人もいた。

私はこの経験を生かして、それは決して高校生活だけに作用する行動力だったわけではないと感じた。その後自信をつけて好きな人に猛アタックすることができたし、行きたい大学も考えることができた。その大学で素晴らしい友達に出会うこともできたし、大学生活でのアルバイトで結婚を前提に付き合う彼氏にも出会うことになる。

すべて点と点のような物語も、あの日あの時行動したことがつながって線になっているのだと感じているのだから、今の苦労も決して無駄ではないけれど、時にはそこを抜け出す覚悟も必要なのではないかと伝えたい。