共通の友人を介して知り合った男性が、遠方から遊びに来てくれることになった。半年前に県外にライブを見に行った際に、初めて話した人だ。静岡出身の私にとって、彼の関西弁は新鮮だった。そこからほとんど連絡をとっていなかったが、SNSでのやりとりをきっかけにゴールデンウィークを利用して遊びに行こうという話になった。

彼は新幹線で、はるばる新大阪から静岡までやって来た。私はオレンジ色のパッソで駅まで迎えに行き、1時間ほどドライブをした。かなり久しぶりに会ったので、最初は少し緊張したが、彼の気さくさな喋りですぐに打ち解けることができた。好きなアイドルのことや仕事のことなど、色々な話を好きなように話した。喋りすぎて疲れることもなく、会話が続かなくて気まずくなるようなこともなく、心地よい空間だったと思う。

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彼は大らかで優しくもあった。私が高速道路の降りる出口を間違えても「まあええやん?いつか着くし!」と笑っていた。少し遠回りして着いた先は三島スカイウォーク。日本で一番長い、人が渡れる吊り橋である。

橋の上は、風がなかなか強い。常に風が吹き続けていて、私たちの前を歩いていたカップルの女性のスカートがぺらぺらとめくれていた。カップルはそれに全然気づいていない。そのような光景をまだ出会って間もない男女が目の当たりにしたら、気まずい空気が流れそうなものである。でもなぜかそうはならなかった。「こういう時、どうしたらいいんだろうね?」「どうしたらええんやろなあ……。」と2人で真剣に悩んだ。結局どうもしなかったけれど。

吊り橋やおみやげ屋さんなどを一通り楽しむと、もう夕方になっていた。私たちは、夕方になるとお酒を飲みたくなるという意見も一致した。車を家に置いてから、たくさんの種類の焼酎が楽しめる居酒屋に行った。適度にお酒を楽しんで、ほろ酔いになった頃に「次は私が大阪に遊びに行くね」と言ったと思う。

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彼に見送られ、私はタクシーに乗った。
発車してすぐ運転手さんが、「見送ってくれたのは彼氏?」と聞いてきた。こういう時に、私はあまり世間話をするタイプではない。でも、その運転手さんが親戚のおじちゃんみたいに優しくて気さくな印象だったので、「いや、友だちですよ」と返し、話を続けた。

「そう、何だか俳優の高橋一生に似てるよねえ、かっこいいね」
「確かに、ちょっと似てますね」
「そのうち彼氏になるといいね!」
私は、特に見送ってくれた彼のことが好きとも言っていない。まだ付き合う予定もなかった。彼の話をするときに、自然に笑顔になっていた……とも思えない。なぜそんなこと言うのだろうと思った。

この2ヶ月後に私は彼と付き合い、さらに2年後に結婚した。あの運転手さん、何か見えていたのかな……?