小学校のときから、自分の顔が可愛くないことには薄々気づいていた。中学校のとき、はっきりブスと言われる回数が増えた。もしかして自分は可愛くないのではなく、とんでもなくブスなのではないかと思った。

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高校生のとき、アイプチに手を出した。丁寧にオフしないとすぐかぶれる。「目、腫れてるけど大丈夫?」とパッチリふたえに言われて、恥ずかしくて惨めだった。アイプチが原因だとバレたら余計に惨めになる気がして言えなかった。

大学では友達と同じサークルに入った。周りの子には次々と彼氏ができた。私の知らないところで男女ペアや男女グループで遊びに行ったりLINEをしたり。聞けば「誘われたから」。

サークルでは「みんな仲良し」って感じだったのに。私もその一員だと思ってたのに。なぜ?私だけ特別なお誘いが来ないのか。
真偽は分からないが、自分の中で答えは出ていた。

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四六時中、自分の顔が気になった。人の目に映る私が少しでもブスにならないようにしたかった。
潰れる目と広がる鼻が気になるから、思い切り笑わないようにした。
元から無いEラインが更に崩れるから、他人と横隣でご飯を食べるときは少しだけ口元を引きながら食べるようにした。

夏休みに友達と海外旅行に行った。写真を撮られるのに抵抗がない子は海外旅行でこそ輝いているように見えた。この期に及んで顔のことを気にしているのはきっと私だけなんだろうな。世界中どこに行っても鏡の中の自分が気になる私と違って、あの子たちは目に映る景色を純粋に楽しめるのだろうと思うと、とてつもなく羨ましかった。

海外に行っても”Beauty”の概念はあるし、海外の人も”Kawaii”という言葉を知ってる。ブスは世界共通ではないかもしれないが、可愛いはきっと世界共通なんだ、と思った。

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ゼミに所属し、気になる後輩ができた。(と、今なら文章に起こせる。)
当時の私は、恋愛しそうな自分を頭の中で召喚して、顔面を金槌でぶん殴った。鏡見ろ、鏡見ろ、鏡見ろ、と唱えた。鏡を見た。この顔のくせに、内面では人並みに恋心を持っているのだと思うと、可哀想で、気持ち悪くて、泣いた。

泣いても私の顔はブスのまま。顔が可愛いあの子は、いま私が泣いてるこの瞬間も、小学校も中学校も高校も、これからも生涯、24時間365日、雨の日も晴れの日も、ずっと可愛い顔なのだ。

いつの日からか、美容整形を心に決めていた。整形なくして私の人生は終われない。
親が整形大反対だった(この話はとても長くなるので割愛する)。そのため、就職して経済的自由を得てから、まず美容整形をすると密かに決めた。何かにつけ顔を言い訳にするのも、そうじゃないよと自分をなだめるのも、ものすごくエネルギーが要る。顔を気にする必要がなければ本来もっと別のことにそのエネルギーを使えただろう。早く整形して楽になりたい。

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2021年4月、社会人になって、まずは二重埋没を受けた。寝ても覚めても二重まぶたなので感動した。アイプチは全部捨てた。

翌2022年、目尻切開と、鼻尖形成と耳介軟骨移植を受けた。
本当は骨切りが必要だと気付いたが、それを受けるには金も時間も無かった。顔のことを考えるのにもう疲れて、早く美容整形を卒業したかったから、いったん諦めた。

2023年5月、鼻中隔延長を受けた。肋軟骨を採取した箇所が痛いせいで眠れなかった。不安で泣きたくても鼻に負担がかかるのが怖くて泣けなかった。
今後、鼻孔縁下降と鼻翼縮小を受けて、それで美容整形を卒業したいと思っている。
現状は、ここまで。

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美容整形してみて、分かったことが2つある。

1. 整形は魔法じゃない。
たとえ骨切りをしても、私は橋本環奈にはなれない。クラスでいちばん可愛い子にすらなれないかもしれない。

2. プチ整形といえど痛みはプチじゃない。「まぁふたえくらいならいいんじゃない」とか、経験してない人には言われたくない。
というか、くらいなら、って何だよ。ふたえだってヒアルだって鼻中隔延長だって、私がぜんぶ決めて、私がぜんぶ受け止めるんだよ。

過去に私のことをブスと呼んだり、雑に扱ってきた人たちへ。

「あなたたちが結婚式や車や海外旅行に使うようなお金を、私は美容整形に使いました。整形は魔法じゃないので、私はまだブスかもしれません。骨切りにはまだ手を出していないし、もっと努力できるのかもしれません。でも、少なくともあなたたちよりは、私は外見磨きを努力したはずですよね。もう、許されてもいいでしょうか。わたしたちのことをバカにするのは控えてもらってもいいでしょうか。私はきっと、子供を作らないので、あなたたちは自分の子供に対して、他人の容姿を揶揄しないように、教育してほしいです」。

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美容整形を経験した私へ。

「相変わらず自分の顔を可愛いとは思わないけど、ここまで時間と金をかけて、行動を起こした自分を褒めてあげたいし、頑張ったねと言いたいです。誰が何と言おうと、『自分には整形が必要だ』という結論に行き着いたあなたの考察とその行動力は間違ってないです。」

結局、過去の傷は癒えないし、青春時代は返ってこない。でも、美容整形をして、少しだけ自分を好きになれた、少しだけ自分を受け入れられるようになったことは、いくらで買っても高くない、整形で得た私の財産だと思う。