最強のデートとは、何だろう。
恋愛経験はほぼないに等しいが、常に頭の中ではイケメンとの恋人ごっこを妄想している私。最強であるかはわからないけど、この形がいちばんしっくり来そうだな、と思う理想の妄想デートを紹介するとしよう。

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まずは最初の設定から。

付き合い始めてからしばらくたった社会人カップル。同棲はしていない。互いの仕事はそれなりに充実しており、忙しい合間を縫って実現したスケジュールだった。午前中はゆっくり準備をする。デートの場所はショッピングモール。ショッピングモールが開く時間に合わせて待ち合わせをしよう。待ち合わせは現地集合。

最寄り駅の入り口付近で待っていることにする。どちらが早く来ても構わないが、おそらく私のほうが早く着きそうだ。基本、遅刻はしたくないタイプ。相手を待たせるのならば、自分が待っていた方が気が楽だ。時間に合わせて彼が到着。彼が電車のなかで送ったであろうメッセージに書かれた、電車の到着時刻と時計をにらめっこし、近づくその時をどきどきしながら待つ。

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彼と落ち合い、ショッピングモールへ向かう。心はドキドキとウキウキで舞を踊っているかのよう。けれど、表情には出さない。普通を装うのが私のミッション。今日は映画を見ることにしよう。前に話していたミステリー作品だ。券売機の前で、あーでもない、こーでもないと言いながら席を決める。フードとドリンクを買って、シアターへと向かい着席する。私は予告編から映画を楽しむ派だ。次に公開される作品を見ながら、これから見る映画への期待値を高めていく。隣で小さな声で話しかけてくる彼に、適当に返事を返しながら。

映画を見ているときは基本自分の世界に入り込む。普段からひとりで映画を楽しむので、ここは邪魔されたくない。自分なりに犯人を推察しながら見進めていく。終盤で明らかになる真実と、加速していくスピードのある展開で、さらに作品の世界にのめり込んでいく私。エンドロールの最後まで見届けると、明るくなったシアターで彼がこっちをみながらニヤけている。どうやら私の集中加減が面白かったらしい。

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映画を見終わり、ノープランになった私たち。とりあえずショッピングモールの中をぶらりと歩いてみる。陳列が目に止まった雑貨屋さんにふらっと入る。これいいね、あれかわいいね、とつぶやきながら店を1周して退店する。その後も気になる店を見てはふらっと入り、何も買わずに店をでる。「この後どうする?」とお互いつぶやくも、そこでしぼんでいくのを繰り返す。このいい加減さが良かったりする。

ブラブラとしているうちに、夕方を迎える。どうせなら夕食を食べていこうという話になり、食べたいお店を探す。私たちが選んだのは、定食屋さん。好きなものを食べられて、相手に気を使うこともない。自分の食べるものがプレートに乗っているのも良い。取り分けるときにとても気を使ってしまう私には、とてもありがたい。

食事をしながら、映画の話になった。あの展開が意外だった。総じて面白かった。あのシーンの俳優が良かったなどで盛り上がる。ケラケラと笑いながら時間はあっという間にすぎる。そして、意外とお腹が空いていたのか、ペロッと完食していた。

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店を出て、またショッピングモール内をブラブラと歩く。とはいえ、すでに1周しているため、さすがに暇は潰せないとなり帰路につく。駅まで歩いていく途中、すっかり暗くなった空を見ながら、今日の充実感を噛みしめる。実のある話をするわけではないけれど、他愛もない話をするこの時間が好きだ。

駅についたら現地解散。カップルならどちらかの家まで送るのが普通かもしれないが、そこまでしなくていいと思っている。離れがたいと思う瞬間も、また会いたいと思える要素になるからだ。自宅の最寄り駅に着き、自宅へと歩く。途中の信号待ちで開いた携帯に入っていた彼のメッセージに返信をして、私のデートは完結した。

デートで大切なのは、意味のない時間を過ごすこと。何かをしていないと気が済まないドキドキ感よりも、何もしなくても楽しいと思えるかどうかを大切にしたい。まったりと過ごす時間も含めて、今日は良い日だったと思えるのが理想のデートだ。