夢という単語を辞書で引くと、「空想的な願望」や「将来実現したい願望」という意味だ
そうだ。空想ではあるが人はそれに強く惹かれ、追い求める。
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夢を持つこと、そして追い続けることは万人が持つ権利だ。現在仕事をしていない自分にも認められている。日々思うが、夢を全力で追い求めている人はかっこいい。夢を達成できる人はもっとかっこいい。内面から自信や達成感などがあふれ出て、輝いて映るからだ。自分はそのような方を羨ましいとは思うが、妬みなど負の感情を抱かないことや邪魔をしないようにしている。
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夢に対する考え方や行動が変わったのは、学生時代だ。
当時受験生だった自分は、憧れの学校に入学するため毎日必死に勉強していた。
自分が志望した学校は進学校でなかなかの人気だった。近所にその学校出身の方がいてご活躍されているのを見て、「この学校に入学すれば立派になれる」と期待を持った。
来たる試験当日。
前半の筆記試験が終わり、後半は面接。相手はその学校の教諭達だった。筆記試験が良くても面接で下手な回答すれば不合格にされることもあると聞いたので、とても緊張した記憶がある。部屋に入り、背筋を伸ばして着席。学校の志望理由や自己PRなど定番の質問をされて、暗記通り答えていく。ここまでは順調だった。
中盤で「将来の夢は何ですか?」と質問された。動物が好きだったこと、そして自分の過去の経験より「助けたい」という思いが強く、当時は獣医師に憧れていた。
「はい、将来獣医師になり多くの動物を助けたいです」と強気で答えた。
するとある面接官がニヤリとして「獣医、難しいですよー」と言った。鼻で笑ったかのようにも見えた。他の面接官からのフォローは無かった。
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「はい、頑張ります」と返答したが、心の中で動揺した。
自分が追い続けた夢を初対面の人間にあっさりと否定されたことに怒りも覚えた。
しかしその感情を抑え、その後の質問にも愛想笑いで対応した。
面接が終わりホッとしながら帰宅していたところ、同じ学校の知人を見かけたため一緒に帰った。知人に面接のことを話したところ、知人も同じく将来の夢について質問されたそうで、面接官からは「厳しいよー」と軽く言われたとのこと。
落胆した。憧れていた学校だったが、そのように簡単に人の夢を壊す大人もいる、しかもそれが教諭という子どもたちに正しいことを教える責務がある人間だったことがショックだった。
結果、その学校には合格した。目標だった学校に入学できたことは嬉しかったが、面接官だった教諭とは関わりたくないと思いながら手続きした記憶がある。
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その面接以降、夢に関して2つの行動を変えていった。
1つは「人の夢を壊してはいけないこと」。
面接にて、夢が心無い行動で簡単に壊れてしまうものだとわかった。たとえ意識しない言動でも壊れてしまう儚さも知った。夢が無くなってしまったことで人生が暗転した話も時に聞く。夢とその人のこれからを壊さないためにそれまでの無関心な態度から、冗談でも人の夢を壊す言動はしないことや人の夢を応援することへ行動を変えていった。
もう1つは「夢を持ち続けること」だ。
その後の話だが、環境の変化や色んなことを学んでいく過程で将来就きたい職業は変わっていった。しかし「誰かをサポートしたい」という夢は一貫していた。その夢を持ち続けつい最近まで、とある方々をサポートする企業に勤めていた。仕事は決して楽ではなかったが自分の夢を持ち続けた結果、多くの方をサポートできたことに達成感を得た。夢を持っていなかったら、早く仕事を断念していただろう。
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あの面接の直後「このまま知らなければよかった」ともわずかに思ったが、自分の夢に対する考えと行動を変え、それらを今日まで一貫できたため良い機会だったと思っている(教諭を許すかどうかは別の話)。
生活が変わった今も自分には小さな夢がいくつかある。今日もどこかで自身の夢の実現に向かいながら、誰かの夢の応援をしている。
夢を持ち、追い続けることは万人に認められている権利だ。