男の子みたいなショートカット。かっこいいハンサムショートカット。ずっとひそかに憧れていた髪型だった。

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髪を切った日、担当してくれた美容師さんが本当にいいんですかって何度か確認してくれた。もっと、もっと短くしてくださいと私は高鳴った鼓動を無視して頼んだ。

そうして横も耳ぐらいまで短くされて、襟足も短くて、ボブでもなく本当に後ろから見ると一見男の子のようなフォルムの髪型になった。そこまで髪が短かったのは私の記憶にはない。実家にある幼稚園以前のアルバムの中ぐらいまで遡るかもしれない。

昔から女の子のようなふわふわな服装よりは男の子っぽい格好が好きだった。でもかわいいものが嫌いなわけじゃない。むしろキラキラふわふわしたお姫様のようなものが好きだった。

どっちも好きだったけれどどっちつかずで、日によって雰囲気を変えてみるとかはできても、一回髪を切ってしまったらかわいい今の服が似合わなくなってしまうのかなぁって思ったりして、年頃の学生時代は周りに合わせた服装にしがちで、髪もずっと長いか、短くとも肩くらいまでだった。高校の頃はかっこいい感じの服装で、大学入ったらかわいい服を着た。

まわりと違う者になるのが怖かった。かわいいワンピースを着てかっこいい髪型にするのを変と言われるのが怖かった。自分の好きを優先してファッションを楽しむ人が羨ましいなと思っていたくらいだった。

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髪を切ったきっかけは特になく、そろそろ髪を切らなきゃなぁって時に友達のひとりがウルフカットにしているSNSの投稿を見て、いっそばっさり行くかと思いつきのまま予約を取って髪を切った。

その場の衝動でばっさり髪を切ったもんだから、髪を切って鏡で短い髪の自分をみたとき見慣れない自分の姿にこれでよかったのだろうか、と不安を覚えた。けれど、「今までで一番似合ってる」そう親友に言われた時は嬉しさが溢れそうだった。

ボブではないし、刈り上げてるわけでもない結べないくらいのショートカット。かわいいとかっこいいの中間点で私的には大満足だったけれど、他の人にどう映るのか不安もあった。ばっさり髪を切るってなんとなく、失恋した時とか気分転換とかそういうように他人から映る気がしてたし。

だからどう思われるのは不安があったけれど、周りからの評判は思ったより良くて、なんなら短い方が似合うねって言ってもらえるほうが多かった。

てっきりなんで切ったの、とか服装に合わないとか言われると思っていた私としては、脱力してしまった。
同じくらい安心して自信が出てきた。

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いまはフリルのついたスカートを履いてふわふわな服装、派手な柄シャツを着たゆるいストリート系の服装、どちらを着る時も男の子と身間違えるようなショートカット。

最近はまたそのショートカットをブリーチかけて人生初の金髪にした。まだ周りの反応は聞いていない。でも夏の空の下で金色の短い髪は自分的に百点満点だなって思っている。かっこよくて、かわいい私になれる気がして。

ほんとうのわたしはかっこいいのもかわいいのも好きでどっちも好きにできる今の私なのだと再確認して。
結構、いまのわたしをわたしは気に入っている。