私には、小学校高学年の頃からの夢がある。
それは、痩せること。
お菓子作りが趣味の母を持つ私は、小学生の時点で既にがっちりしていた。生まれ持った骨格の影響もあるが、普通にしっかり小太りだった。
どこかが飛び抜けて太っているというよりは、全体的に肉肉しい体型をしていた。二の腕、太もも、腰回り。

気になるところはたくさんあるが、鏡で見たとき、一番に目につくのは、やっぱり顔だ。身体に比べればそこまで肉はついていなかったが、それでも余白が気になった。エラがはっているのと、目、口、鼻の全てのパーツが小さいせいもあったと思う。

しかしながら、私は食への執着心も大きいタイプだった。女子で私より食べる人には会ったことがないと思う。周りの大体の女の子は私に比べると少食で、たまに同じくらいの量を食べてくれる子もいる、という感じだった。それでいて、自制心も薄いという舐めた人間性をしているため、食べることを我慢するということも当然できなかった。
ここまで読めば大体予想できるだろうが、運動も大の苦手だった。ほとんどの競技において、クラスでは常に最下位。なので、プライベートの時間で体を動かす気分には全くならない。

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そんなわけで、24歳の現在まで、「痩せたい」という願いは叶わないままだ。大学受験に向けて浪人していた時期は一番体重が軽かったのだけれど、それでも身長158センチで51キロくらいで、特別痩せているとはいえない状態だった。最近は怖くて測っていないから正しくはわからないが、多分55キロくらいだと思う。

だが、唯一、願いが少しだけ届いている部位がある。顔だ。

社会人になってから、エラにボトックスを3回ほど打ったのだ。筋肉によるエラがかなり張っているタイプだったようで、効果は絶大だった。元々ホームベースそのものだった顔型が、内角が大きい向かい合っている2角のみ擦り切れたホームベース、という感じになった。また、埋没法による二重整形の手術を受けたことと、アイメイクをしっかりめに施していることにより、目の存在感がアップした。そうすると、相対的に余白が目立たなくなり、顔が小さく見えるのだ。あと、年齢を重ねたことで多少は肉付きが落ち着いてきてもいる気がする。
そんなわけで、顔限定で、私の夢は叶った。……が、前述した通り、身体は全く痩せていない。なので、全身を見るとちょっと奇妙な感じになってしまった。顔は全く太っていないのに、身体はガンダム。小規模なトリックアートのようなのだ。見ていて不思議な気持ちになる。お笑い芸人の餅田コシヒカリさんを彷彿とさせる仕上がりだ。彼女はあれで人々を笑顔にさせ、お金を稼いでいるのだから立派なものだが、私は会社勤めしている一般人なのである。この妙な体型を生かす道は、多分無い。

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つまり、頑張って身体をスリムにするしか、私に残された選択肢はないのである。しかし、そんなことができるのならとっくにやっている。24年間付き合ってきた怠惰な人間性と、今更おさらばするなんて、きっと無理だ。
なので私は今日も、このバランスが狂った体型で街を歩く。この文章を読んでくれている方で札幌に住んでいる方。もし今後、不可思議な体型の女とすれ違ったら、それはもしかしたら、私かもしれません。