私の本当に最初の夢は「シンガーソングライター」だった。言葉の使い手として永遠の憧れの一人である宇多田ヒカルを始め、アンジェラ・アキやYUI、加藤ミリヤなど自分の人生や経験を歌詞に落とし込み、自分の言葉を自分で歌うシンガーソングライターに物凄く憧れた。

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作詞作曲できる歌手になりたい!と夢を抱いた小学生は、自作の歌詞をノートに書きまくった。姉の友達から頼まれて、その子の「片思い」をテーマに歌詞を書き、当時家にやってきたばかりのパソコンで印刷してプレゼントしたりもしていた。

こうして書き始めるまで、そのことをすっかり忘れていたくらい、私の中でシンガーソングライターになるという夢はいつの間にか夢ではなくなっていた。夢を諦めた、とも堂々と言えないのは私がシンガーソングライターになるための努力を一切していないからだ。

スクールに通ったり、オーディションに出たり、ネットに自作曲を上げたり、そういったシンガーソングライターになるための具体的な行動は起こさないまま、成長するにつれて「人前に出られる容姿ではない」ことに気づき、シンガーソングライターになりたいと思わなくなっていった。

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自分の才能がないことに失望することも、誰かの才能に狂おしいほど嫉妬することもなく、
私の夢はふんわりと潰えたけれど、表現することの楽しさや言葉で人を喜ばせることができた時のうれしさ、人の心を動かしたい欲、自分の経験を無駄にしたくない気持ち、言葉を綴ることが好きだという想いは、今思えば幼かったこのころに芽生えたのだと思う。

その後、高校生になった私は言葉に関する選択授業で毎回提出することになっていた課題作文または読書感想文が予想外に好評だったことに調子に乗る。
元々本を読むことは大好きだったけれど、私は書くことも好きで、もしかしたら何かを書くということが人よりも得意なのかもしれないと思い始めた。

その後、趣味に関する個人ブログを始めたり、SNSでそこそこバズったり、少なくないフォロワーを抱えることになって、そのもしかしたらは徐々に確信に変わっていった。

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自分の書いたことが誰かに喜んでもらえたり、誰かの役に立てばと思って書いたことが読んでくれた人の行動を起こすきっかけになったり、自分の経験をもとに対して書いたことが誰かの救いになれたり、泣いたり、笑ったり、好きだという言葉を投げ返してくれる人が沢山いて、私がシンガーソングライターとしてやりたいと思っていたことが、いつの間にか全部叶っていたことに気づいた。

私の夢はシンガーソングライターではなく、自分の言葉で人の心を動かすことだったんだと解った今、こうしてサイトなどに投稿することもあれば、個人ブログで推しや趣味について語ったりしているだけでなく、書くことを仕事にすることを決めた。

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仕事として書いている内容やジャンルは自分の好きなことや書きたいことではないけれど、だからこそ仕事として感情を持ち込まずに「人の役に立つ」という目的を果たすための責任をもって書けている。

好きなことについて好きなように書くのは、プライベートで思い切りやればいい。
以前はそのどちらもがごっちゃになっていて、好きなことについて書くことを仕事にしなければ成功ではないと思っていた。

今は本当にシンプルに、自分に合ったやり方で毎日夢をかなえているといえる。
自分の望んでいた姿ではなく、簡単な方法でもないかもしれないし、予想不可能なタイミングかもしれないけれど、最初に芽生えた夢は、形を変えて、やり方を変えて、思わぬところで、でも必ず花開く。

だから私は今、また新たに芽生え始めた「いつか本を出したい」という夢を密かに育てていくつもりだ。