海外旅行で20カ国以上訪れたが、個人的に中でも忘れられないのは、カンボジアとフランスのパリである。

学生時代にカンボジアを訪問したバイト先の友人がもう一度行きたい」と言っていたのを聞いて、化石好きの高校時代の友人と一緒に女子旅で訪れた。

入国の際、カンボジアはビザが必要で、さすが観光立国だなというのが第一印象だった。ホテルもレストランも日本とさほど金額が変わらなかったが、リゾート地なだけあって、外国人が滞在するような街中のホテルはどこも綺麗だった。

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訪れたのは首都プノンペン。空港からタクシーで向かったが、そのタクシーも何種類か料金レンジがあり、それによって運転手が何語対応で観光ガイド付きかどうかなどサービスが変わるようだ。この時も、仕組みとしてよくできてると思った。

街中はバイクよりも車中心の生活であることに驚いた。日本車や韓国車を目にすることが多く、街並みから親日なのが伝わってきた。ホテルも掃除が行き届いているし、食事をした際、グァバジュースを最後残すと、「お口に合いませんでしたか?」とウェイターに英語で尋ねられ、「お腹いっぱいなのと、正直少し甘かったです」と答えると、「有難うございます。勉強になります」と感想をメモしていた。よく顧客をみていて、勉強熱心なんだなと感心した。

今度は、繁華街にでてマッサージを受けにナイトマーケットを散策していると、よく日本語や中国語で話しかけられた。客引きレベルの会話しかしていないが、流暢な中国語と日本語だった。

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カンボジアは意外と車社会、ホテルや食事などの滞在費用は日本とほぼ同等、ただ価格に見合った清潔感や味が保証されている真面目で優秀な国民性なんだなと思った。2日目は、現地の個人ツアーコンダクターを利用して、お目当てだったアンコールワットの朝日を観に行った。個人でやっているツアーだったが、アテンドの若者が「本当に日本に来たことないの?」というくらい日本語が上手で気配りのできる人だった。日本語を勉強して、いつか日本で観光を学んでみたいのだそう。アンコールワットは、日本の屋久島のように自然に囲まれた静謐な地だった。

旅の終わりには、友人がいっていたように「カンボジア再来したい!」と私も思った。食住のサービスレベルや穏やかで言語の壁を感じないひたむきな国民性、外車が普通に走る車社会なのに高い建物が一つもなく、地面が平坦で土のままで守られたカンボジア流都市空間。
ほどよい活気にほどよい自然や清潔感がある日本人に優しい街。それがカンボジアの印象だ。

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一方、フランス・パリも忘れられない場所の一つだ。パリには学生時代にツアーで5泊したが、まだまだこの街の表層もわからない……というほど、馴染むのに時間がかかった旅先だった。街中の横断歩道を歩く老若男女のファッションの高級感、お店のウィンドウに飾られるスイーツの芸術性、朝のマルシェのおじさんのご機嫌そうな笑顔に仏語への徹底したこだわり、かといって、街中に堂々とユニクロがあったり、夕方には黒人男性が何か叫びながら道路の中心を自転車で走っていたり、凱旋門の前には物乞いが至る所にいたり、セーヌ川のほとりで男女が上半身裸で寝ているのが日常風景だったり。パリに滞在するほど、一言では切り取れない良くも悪くも「いびつな国」という印象を勝手に受けた。

ただ、街を歩く人のどのファッションも高島屋にありそうなシックな洋装だし、スイーツにパンにサラダに何を食べても濃厚でフレッシュでお洒落で美味しい!とテンションが上がる街だった。初めての5泊では建築やファッションなど表層的なデザインしかわからない場所だったからこそ、今度はもっと長期でじっくり住んでみたいという好奇心が湧いた。パリの凱旋門やモン・サン・ミシェルにルーヴル美術館などはもちろん行ったが、それ以外の街の景観もグルメもどれも絵になる光景ばかりが私のスマホフォルダに保存されている。大人になったらまた訪れたいしもっと近づきたい、そんな大人で複雑な印象の面白い街だった。

どちらも学生時代に行った旅先だが、社会人になり多国籍チームでの勤務経験を経た今、再び旅行したいと思っている。