今回のパートナー

高橋久美子さん

1982年、愛媛県生まれ。チャットモンチーのドラマーを経て、2012年より作家・作詞家として活動する。チャット時代の主な作詞曲に、「シャングリラ」「ハナノユメ」「風吹けば恋」など。現在は原田知世、大原櫻子、ももいろクローバーZ等、様々なアーティストに歌詞提供する。主な著書に、エッセイ集『旅を栖とす』、『いっぴき』、詩画集『今夜凶暴だからわたし』、絵本『あしたがきらいなうさぎ』等。4月に自身初となる小説集『ぐるり』を発表した。

峯岸:卒業コンサートを終えたばかりで、満身創痍の状態でスタジオ入りしたのですが、久美子さんの優しいオーラが……!

高橋:卒業おめでとうございます!

峯岸:高橋さんは、元々はチャットモンチーというバンドで10年ほど活躍された後に、作家に転身されています。そのあたりの経緯やきっかけをお聞きしたいです。

高橋:徳島に住んでいた頃、24歳ぐらいでデビューが決まって上京しました。大学生の頃は、軽自動車に楽器を詰め込んで、自分たちで運転しながら四国から西日本のライブハウスをまわっていましたね。

峯岸「バンドをやめることに後悔はなかったですか?」

峯岸:バンド自体も大きくなって、たくさんの方に聞いてもらえるようになって……。そんな中で、やめようと思うのってどういう感覚なんでしょうか。普通、人気者になったらずっとそこにいたいって思っちゃうんじゃないかなと。

高橋:デビューしてからって、ジェットコースターに乗っているようで。アルバムを作ってリリースして全国ツアーをして。ツアーの移動中は次の曲の歌詞を書いて、できたらホテルの隣の部屋のドアの隙間に差し込む。夜お風呂に入ってるとえっちゃん(ボーカルの橋本絵莉子さん)がさっきドアに挟んだ歌詞でもう新曲を作ってて、換気口を伝って歌が聴こえたりしてね。とってもロマンチックなんだけど、やっぱり単純に忙しかったね。次の次くらいのシングル曲を作りながらツアーをしているという。いや、ライブもレコーディングも楽しいんですよ。でも、自分を追いかけているような感じがあった。一度、元の自分に戻ろうかなって思ったんです。やめることは、家族にも相談せずに決めました。

峯岸:AKBも卒業っていう形があります。大きいグループだと、当たり前に入れ替わっていくものだと思っていましたけど、チャットモンチーさんは3人グループだったから、3人中1人が抜けるってすごく大きなことですよね。

高橋:大きなことよね。でも、2人は家族よりも長く一緒にいたので、雰囲気で気づいてくれていた感じはあったかもしれない。「音楽」って「音を楽しむ」って書くけど、その時は、しんどいが上にきつつあった。何より、ベストじゃない状態で作った曲を世の中に出すわけにはいかない、っていう思いもあったんですよね。

峯岸:やめて後悔はなかったですか。

高橋:後悔は今のところないですね。こないだ、トークイベントで久しぶりに、ちょっとだけドラムを叩いたんですけど、すっごく楽しくて。1回音楽から離れてみて、改めて音楽っていいなって思いました。

峯岸:音楽嫌いになっちゃう前に離れられて良かったんですね。文章を書こうと思ったのはなぜですか。歌詞は書いてらっしゃったんですよね。

高橋「歌詞も小説もエッセイも『表現する』という意味では同じかも」

高橋:事務所を辞めて一人になったときに、私のホームページに歌詞の依頼がポーンときたんです。で、歌詞を書いたら、また次の依頼がきて。こうやって人が求めてくれることがあるんやなって思って、作詞家って言っちゃってます。

峯岸:そこから、小説やエッセイも書くようになられたということですが、歌詞を書くのと同じような感覚なんですか?

高橋:「表現する」という意味では元は同じ気がするなあ。クッキーの生地を麺棒で伸ばしていくと、小説になる感じがします。

峯岸:素敵な表現…!私もコラムとかをやらせていただいていて、文章を書いたりするんですけど、難しくて。何か心構えとかあったら教えてほしいです。

高橋:心構えかー。書いている時より、書いていない時間の方が大事かもなあ。普段何を見て何を考えているかが、文章の大元になっていくと思うんです。例えば、一本のコラムだと書いてる時間って実はそんなに長くないですよね。そうじゃない時間の中で、どんなことを感じながら生活するかが大事かなあ。

今日ね、隣のおばあちゃん家にお客さんが来てたらしくて。帰りに、お客さんが「またね、シーユーアゲイン」って言ったのが聞こえて。だって相手はおばあちゃんですよ。どんな関係なんだろうって。私が小説にするなら普通に「さようなら」って書いちゃうと思うんです。でも「シーユーアゲイン」の方がすごく素敵だし物語が広がりそうと思った。日常の中にこうやってヒントはたくさん落ちてますね。

峯岸:へえ!!!正直、うまく書けるコツがあるなら知りたい、みたいな質問だったんですけど、すごく納得しました。書く以外の時間で何を見て、何を感じるか、か。気づいてなかったなあ。

高橋:いえいえ、ありがとう。目線、見え方が変わると、色んなことが面白くなるよね。

峯岸:私、スマホ依存症で、1日13時間くらい見ちゃうんですけど、だからもっと、周りの景色とか音とかに耳を傾けるべきだなって思いました(笑)。

  • 峯岸みなみをこっそり後で褒めたげたい(By高橋久美子さん)

    みなみさんは、とても頭の回転が早い方。でないと前日に卒業の大きなステージを終えて、抜け殻の状態から、スタジオに入った途端に初対面の私にあんな的確な質問できないです。
    とても頭の良い方だと思いました。
    それだけでなく、そこに真心もこもっているから素敵なんですね。
    話を受け止めてくれるから、どんどん喋ってしまいました。
    だからこそ、きっと優しく繊細な方で時にしんどいこともあると思いますが、20代もがいた分、30代はいろんなことがすっきりします。
    また機会があれば、いろんな話をしてみたいですし、これからのみなみさんの活動を追いかけたいです!

    高橋久美子さん 高橋久美子さん

Tokyofm「峯岸みなみのやっぱり今日も褒められたい」

峯岸みなみさん「やっぱり今日も褒められたい」

◇放送時間:木曜日21:00-21:30 ◇出演者:峯岸みなみ(AKB48) AKB48の1期生で、朝日新聞の女性向けWEBコラムサイト「かがみよかがみ」内でコラム連載を持つ峯岸みなみの新番組がスタート!アイドルとして15年の活動を経て、30歳という年齢が見えてきた一人の女性としてリスナーと本音で向き合う30分の番組です。一日の終わりくらいちょっと褒められたい。そんな思いを共有しませんか? 番組HPはこちら