4年前、ちょうど新卒でその当時の自分にとってようやく念願の環境で社会人がスタートした。社内公用語は英語、上司も欧米人、チームメイトも自分以外は外国籍、多くの人が知っている某大手企業で英・中・日本語のトリリンガルのセールスマンだった。そして今、私は単身で日本の地方に移住して全国の自治体と社会を創るための仕事を一緒にしている。

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「日本の大学生なのに忙しくて変わってる」と中国人留学生に言われるほど学生時代は自分なりに精一杯で、一言でいうと「希望の就職先に就くため」の将来のための学生生活の4年間を過ごしていた。日本の学生の割に未来志向で能動的で活動的だったが、その反面どこかハングリーで今を楽しめない学生だった。

しかし、やはり大学4年間(大学受験勉強も入れると通算7年間)の自分なりの強い想いや努力があり就活時は神様も私に微笑んだ。
その当時に自分が一番行きたかった念願の企業からオファーがでて、第一志望だった「多国籍チーム」への配属も決まった。大学受験は無念に終わった背景もあり、この時ばかりは、「ようやく願いが叶った」希望の居場所を自分で「手に入れた」と他の大学生活の日々では考えられないほど嬉しかったのを覚えている。

学生時代の私は、遊び方もよくわからない、実社会もよくわからない、所属や肩書きなど社会的評価が自分に無いと胸を張って生きられない、そんなステータス欲しいエンジンで将来に向けて生きる日々自分の人生で忙しない一直線な人間だった。

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ただ4年前、晴れて希望の環境で社会人になると、初めて学生時代にはなかった憧れの会社の”看板”や毎日欧米人の上司と英語で仕事をするという自分のそれまでの努力が最大限実った形でステータスを得られたことも、世界各国から優秀で経験豊富な自信ある同期や先輩に恵まれたことも、肩書きを持ち自信が生まれ開拓できたプライベートの豊かな人間関係も、そのどれもが「これが本当に自分の人生なのか?」と思ってしまうほど幸せで満たされているのに、どこか自分の日々に違和感を持つようになってしまった。

憧れだった環境で高い給与を貰うものの、「お金のためだけに働くのは虚しい」「自分一人で個人の理想のために生きていくのではなく、これからは誰かと一緒になりたい、温かい家庭を築きたい」「社会的評価より、自分の好きな人生を選択したい」異文化で成果主義というハードな環境やこのまま昇進しても思うような将来が思い描けない状況でその様な思いがめぐり、未来志向で活動的だったのに、仕事や社会的成功よりも身近な人間関係や自分が本当にやりたい事への優先順位が上がるようになった。

これは、4年前に新卒でようやく思うようなステータスをつかみ周囲に恵まれ、周囲の環境やそれまでの自分の努力に対して初めて満足し、”今”を生きれるようになったからだと思う。

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あれだけ大学受験での悔しい思いを晴らそうと社会的ステータス欲しさに未来に向けて一心不乱だったのに、いざその環境を手に入れると、自分の本当にやりたいことや人生の優先順位を見つめ直すようになった。

自分の大事にしたい価値観や幸せの定義_____「ミッション系スクール出身者なのもあり、やはり社会的意義のあることに携わりたい」「仕事でもプライベートでも豊かな人間関係を築きたい」「一社目までは全て自分の努力で自分の希望の会社や部署など進路を叶えてきたが、今度は、信頼している人の言うことを聞いて導かれるように自分のキャリアを築こう」と思い、三年前に地方移住をし、ソーシャル系の仕事をするようになった。

努力によってそれまでの自分の希望を叶え、それが想像以上に満たされてしまったからこそ価値観の転換があり、自信を持って本当の自分に向き合い、自分の人生を選択、周囲を大事にできるようになった。

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現在の幸せは、仕事を通して自分の手で社会を創っている実感を持てたり、思慮と配慮に富む穏やかな人間関係を職場内外で築けたり、旅行や料理など趣味に時間を割けたり、精一杯笑えたりなど…。で、やはり現在も新天地で”今”を生きている。

4年前の自分と違うのは、自分の影響範囲を大きくしたいと思うようになったこと。自分の人生の成功や夢の実現ではなく、仕事もプライベートもいまは身近な人を応援しよう、一緒に実現しようと思えるようになったこと。一肌も二肌もぬいで個人ではなく輪の中心になって貢献している人になれていると嬉しい。