昔から子どもが苦手だった。だって、うるさいしわがままだし。夫と結婚した際も「絶対子どもが欲しい」とは思わなかった。自分が子どもを育てるなんて想像できなかったのだ。
なので、娘の妊娠がわかった時は、嬉しさよりも戸惑いが勝っていたと思う。そんな私が望んで、今では二児の母になったのである。たった数年で子どもに対する思いが変わってしまうなんて、人生って不思議だ。
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娘が生まれた時の感想は、「あ、思ってるより小さいな」だった。触れたら壊れてしまいそうな大きさ。産んでおいてあれだけれど、産んだことでやっとお腹の中に赤ちゃんは実在してたんだと実感できた。ぼんやりとした頭で、大変だろうけどなんとかなるなんて、軽くのんきに考えていた。実際は想像を絶するような日々を送ることになるのだけれど。
出産翌日からノンストップで育児が始まった。なんで泣いてるのかわからん。とりあえずミルクミルクミルク。抱っこしてみる。便秘でお腹が痛いんかな?綿棒で浣腸しよう。とにかく泣く原因を考えては対処する試行錯誤の日々。スマホで検索しない日はなかった。
発達は?障害はない?考え出したらキリがない。生まれたばかりの赤ちゃんがきっちり数時間おきに寝て起きるわけがないのだ。誰だ、ミルク飲ませておむつ替えるだけで大丈夫なんて言ったの。全然大丈夫じゃない。寝ない。なんでも良いから寝てくれよ。
今思えば構いすぎだったんじゃないかと思うのだけれど、当時の私は眠るまで付き合わなければいけないと思っていた。赤ちゃんを布団に寝かせ、目を瞑って寝息が聞こえるまで、自分は安心して眠ることができなかったのだ。まとまった時間眠るようになるまでの約一年間、私は半ばノイローゼ気味になりながら育児していた。「二人目なんて絶対無理」とも思っていた。
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私も夫も、兄弟がいる。ともに末っ子で、小さな頃は、兄や姉と喧嘩しつつも遊んでもらった記憶がある。積極的に子どもを作る話なんてしなかったけれど、二人とも漠然と「兄弟はいた方が良い」と思っていた。けれど実際問題、娘ひとりを育てるだけで疲弊しているのに弟や妹なんて作れるのか?兄弟がいないとかわいそうなんていうのは親のエゴではないか?そもそも私は子どもが好きではないではないか。
結論が出せないまま、数年の月日が流れた。いつの間にか、私も夫も二人目の話なんてしなくなっていた。もうこのまま娘と三人で暮らすものだと思っていた。そう思っていたけれど、転機が訪れたのは娘が幼稚園に通い出した頃だった。
娘が幼稚園に通い出すと、時間に余裕が生まれた。家で仕事をしたり、趣味に時間を費やしたり。もう娘の体力を削るために公園や児童館に行かなくていい。めっちゃ最高!自分のために時間を使うって最高やん。そう思っていたはずなのに。
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また頭の片隅で、二人目について考えるようになってしまった。娘に弟か妹がいれば、家が賑やかになるのではないか……。娘も時折、「赤ちゃんが欲しい」と言ってるし……。とはいえ、あの日々をもう一度体験するのかと思うと正直気が遠くなりそうだ。というかそもそも私って子ども好きちゃうやん。どうした?気でもおかしくなったか?
二人目が欲しい理由なんて、考えてもよくわからなかった。どれも取ってつけたような理由になってしまう。突き詰めていくと「じゃあ作らなくても良くない?」となりそうで。
でも今、作らないって決めたら後悔するのではないか。せっかく欲しいと思っているのなら挑戦しても良いのではないか。子どもなんていらないなんて思い直さないうちに、夫にもポツポツと二人目が欲しいと話した。ちょっとびっくりしていた。そりゃそうだ。子ども好きでない私が急に子どもが欲しいと言い出すのだから。夫は驚きつつも、「挑戦するだけ挑戦してみよう」と私の想いに寄り添ってくれた。こうして私たちは二人目を作ることに決めた。
つわりも出産も一度経験したとはいえ、つらいものはつらいし痛いものは痛かった。けれど、自分が望んだことだと思うとなんとか乗り切れた。「これで最後だから」が合言葉だった。前回以上に食事に気をつけ、運動をして出産に備えた。今回は娘も赤ちゃんの誕生を楽しみにしている。娘のためにも、元気な赤ちゃんを産みたい。やがて次女が生まれた。「生まれてきてくれてありがとう!」
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次女が生まれてくるとやっぱり壮絶な日々が始まった。二人とも寝ない日なんて、寝不足でイライラしてしまう。けれども、娘がひとりの時よりも肩の力を抜いて育児しているように思う。娘が赤ちゃんの時は、うまく話しかけられなかったのに、今ではたくさん抱っこして話しかけてしまう。素直に可愛いと思う。機嫌が良さそうなら、無理して寝かそうとせずにある程度様子を見よう。自分を追い詰めないためにも構いすぎない。
あの時もこうやって育児できたら良かったのにな、と思わずにはいられない。けれど、娘の育児経験がなければ赤ちゃんを可愛いと思うこともなかったし、二人目を作ろうなんて考えもしなかっただろう。たった数年、娘をひとり育てただけで「赤ちゃん可愛い〜」なんて思う日が来るなんて思いもよらなかった。人生ってどうなるかわからない。これからも流れに身を任せつつ、自分の変化を受け入れていきたい。