洋服についての思い入れはたくさんあるし、これまでいろんな服を買って着てきた。その中でもどうにも忘れられない夢の服がある。それはセーラー服やブレザーといったいわゆる制服である。

◎　　　　　　　　　　◎

昔から制服への憧れが強くあった。テレビアニメやドラマに出ているお姉さん達は白線の入った大きな襟に色とりどりのスカーフやリボンを身につけて膝丈位のプリーツスカートをヒラヒラさせながらクラスメイトや家族、恋人と歩いておりそれがとてつもなくキラキラと輝いて見えた。

制服は清楚な雰囲気でもギャル系な雰囲気でもどんな雰囲気にもピッタリと馴染んでいて綺麗だった。「いつか自分もそうなりたい」といつかの自分を想像して心躍らせたものだ。しかし現実は夢見た通りになる訳でない事は中学生の時に思い知った。中学生になって初めて着た制服は紺を基調としたシックな造りであった。とても可愛いと思ってワクワクしながら着てみると何故だかあまり似合わなかったのだ。

◎　　　　　　　　　　◎

もっと言うと可愛くなかったのである。成長期等を見越した大きめの作りだから今の体に合ってないのか、小学生を卒業してすぐだから顔にまだ幼さがあるからなのか。体型が寸胴だったからか。理由は分からない。とにかく自分が思い描いていた姿とは遠くかけ離れていたのだ。この事実は幼いながらに大分ショックだったし、そしてそれが何かの暗示だったかのように中学時代ではあまりいい思い出を作る事が出来なかった。

そう、テレビで見たあの子達みたいに自分はキラキラにはなれなかったのである。そうすると制服を着る事へのワクワク感は薄れて行くばかりか着る事さえ億劫だと思うようになってしまった。あんなに夢を見ていたのにこうも儚く散るのかと当時は残念で仕方無かったし、中学時代のいざこざや人間関係に揉まれて自分は卑屈になっていって制服どころの心境では無かった。

しかし高校入学する時に自分は衝撃的な制服を目にすることとなった。自分の通っていた地域の高校は私服高が多く、私服、もしくは学校指定のジャージで登校する高校生をよく見かけた。例に漏れず自分もそうなると思っていた。ただ、問題は入学式。入学案内にも特にコレといった服装の指定は無く、それが母と自分で頭を悩ませた。

◎　　　　　　　　　　◎

「スーツにするか」「中学生の時の制服を使うか」etc……。いろんな案が出ていたが中々決まらなかった。制服というのはある意味便利な物で特別な何かの時は制服にすれば安牌で他者からの視線も気にならないのである。とどのつまり制服が無いと言う事は自分で全てを考えて用意しなければならないと言う事だ。TPOなんて言葉があるようにそれに合わせるコーディネートをするのが大人の第１歩なのだろうと思った。

散々悩んだ挙句、母が知り合いの人から「去年はスーツが大半だった」という情報をゲットした事でスーツに決めた。そして服屋さんでスーツを購入したのだがその時にチラリと目にはいったものがあった。それはいわゆる「なんちゃって制服」というものであった。

ワイシャツの上にベストやカーディガン、その上にブレザーを羽織り、チェックのスカートとそれに合わせたリボン。当時の人気アイドルが着ていたものと似ていてとてつもなく可愛かった。理想の制服と言っても過言でないくらい完成されたものだった。だが、もうスーツと決めていたし、その時は制服欲が薄れていて「着たい！！」とならなかった。これが後に自分の中での思い残しとなる。

◎　　　　　　　　　　◎

スーツを着て迎えた入学式。そこには「なんちゃって制服」を着た女子で溢れていた。我々の頭にはその年にはその年のブームがあると言う事が抜けていて、その年は「なんちゃって制服」が覇権を握っていたのだった。

カラフルで個性的で可愛くて、でも式典に馴染む姿は素敵だった。あの時思い描いていた姿が蘇るようであった。スーツの子もいるにはいたがほんのひと握りで間違っては無いけど間違ってる気分になった式典なんて後にも先にもコレっきりだ。その後も私服の代わりに「なんちゃって制服」で登校する子も多く、正に思い描いた制服の姿を彼女達は見事に再現していた。

◎　　　　　　　　　　◎

やはり制服は自分にとって憧れの象徴だった。制服を着てしたかった事はたくさんある。制服で放課後にクレープを食べてみたり、プリクラを撮ったり、テーマパークに行ったり……。もう叶える事は難しいが今でも妄想は尽きない！歳を重ねてファッションの視野や感性は広がっていったがいつまで経っても憧れの服は変わらない。もう着る機会はそうそう無いかもしれないが叶う事ならもう1度制服を着たい。

そんな思いがあったからこそ今しか着れない服や今だからこそ着れる服があるならばあれこれ理由を付けないで「これが好き！」を全面に出して身に付けたいと思う。そんな自分は今日も運命の一品を求めてファッションサイトを眺めている。新しい憧れの自分になる為に。