最近好きな物や好きな人を口に出すことを難しいと感じている自分がいる。
大人になっていくにつれて、自分の好きが周りの共感なしでは恥ずかしいとすら思ってしまっているのかもしれない。
職場の先輩が解雇になった。どうやら社長からはよく思われていなかったらしい。
◎ ◎
18歳初の就職で、知らない街での初めての一人暮らし。実家に帰るには2時間程度。週に一回の休みで、連休はとれない。
学校にもまともに通えていなかった私には正直挫けそうにもなったが、夢を叶えたい思いで必死だった。
人生で初めて夢ができて、このことを親に話したら嬉しそうで、引越しも手伝ってもらって辞めたいなんて情けない。上司に毎日のように怒られて、帰り道涙を流して。 ベッドの上でも泣いてそのまま眠りにつき、朝、吐き気と戦いながら仕事に向かう。
そんな中仕事を続けられたのは先輩がいたから。
正直人の少ない職場なので私は上司とほぼ2人で仕事をしていた。
だから違う作業部屋に行くことは少なく誰とも話をせずに一日を終えることが多かった。
そんな中廊下で挨拶を交わした違う部署の先輩が、「ねえ。名前なんて言うの〜身長いくつ〜??」と声をかけてくれた。あまりの動揺に「あ。あ」とどもってしまったが、そんなことにもあははと可愛く笑う先輩が私にはまるで太陽に見えた。
それからは先輩と廊下ですれ違うことを糧に頑張れた。
不安だった毎日が明るい方へ向かっている気がした。
◎ ◎
それから数ヶ月先輩は解雇になった。 周りの噂によると先輩は社長と揉めたらしい。理由はよく分からない
先輩のLINEは持っていたけど、なんて送ったらいいかなんて分からない。
私は先輩が好きだ。あなたのおかげで今ここにいる。
そう伝えてもいいのだろうか。
社長に先輩と連絡を取るなと言われた。
私の好きはどこへ行くのだろうか。
私の好きは見えないところへしまっておかないといけないのだろうか?
私のlikeが誰かにとってbadなら、 それはlikeとして認められないのだろうか。
好きだと声に出してはいけないのだろうか?
そんなことは誰が決めたのだろうか、もし神が決めたのなら、私は神が苦手だ。
いや違う。誰も決めていないのだ。誰も決めていないのに、そういう雰囲気になってしまっているのである。
小さい時自分の好きは自分で決めていたのに、いつからか周りの目を気にして、認められない好きは見ないふりをするようになっていたのだ。大人になることを夢見ていたあの頃の私は今、幼かったあの頃に戻りたいと願う。
◎ ◎
ふと見つけたYouTube、好きな服を着て、好きな髪型や髪色をして、カフェに行って、歌を歌って。まるで私の夢を代わりに見ているみたいだった。
私はすぐ先輩にLINEをした。先輩のおかけで今私がここにいること、あなたが誰も見向きもしなかった私を照らしてくれたこと。
全部全部伝えた。
正直返信は帰ってこなくても良かった。
ただ私が自分の好きを認めたかった。
私の中にいる小さい私。
今まで見ないふりをしてきた私を、 ここにいると、存在を。
先輩からはすぐに連絡が返ってきた。
「○○ちゃんの夢応援してるよ!!」
私はすぐに会社に電話をした。退職をしたいと。
好きを認めてもらえる会社に行くために、私は仕事を辞めた。
後先考えずに行動するタイプではないので、親には心配をかけたと思う。
でも、応援してると言ってくれた。
私は誰かの好きを分かってあげる必要なんてないと思う。
ただ誰かの好きは自分で大切にして宝物にして認めてあげたい。
世の中にはたっっくさんの認められないことはあるけど、それでもいつか自分の好きを愛せるように。
今日も私は先輩の笑顔を思い出す。