はっきり言うと、私は家事が苦手だ。その中でも、整理整頓めっぽう苦手だ。

20歳前後、病気を発病してから輪をかけて苦手になった気がするのだが、とにかく、物を片付けるということができなくて、机や床にものを積み重ねることはざらだった。実家にいたときの自室は足の踏み場がない、いわゆる「汚部屋」というものだったのだろう。ベッドの上だけで生活ができるようにベッドの上さえも物が置かれ、家族も部屋のドアを簡単には開けなくなっていた。

しかし、とあるきっかけで私は目覚めたように部屋を片付けるようになった。

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そのきっかけというのは、前職を退職したこと。退職直後は体調が悪く何もできなかったが、ゆっくり休養をとったのちに唐突に「身軽になりたい」と思い、部屋を片付け始めた。ただ、片付け方を誰も教えてくれなかったから初めのころの私は物を端っこに置いたり、ひたすら積み重ねたり、することしかできなかった。所謂、整理整頓はやっぱり苦手で、どこに何を置けばよいのか考えることがまだできなかった。

そこで私は思い切って、「断捨離」を始めた。

とにかく物であふれかえっていたこの部屋から物という物を処分していった。ビニール袋をいくつか用意して、自治体の分別に合わせてものを放り込んでいく。初めは「これは思い出があるし」「これはもしかしたら使うかも」などと言って、なかなか進まなかったが「身軽になって一人暮らしをしよう」と決めたときからは行動が早かった。

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実際には数えていないが、部屋にある半分くらいのものを手放したのだと思う。久しぶりに見えた机と床に感動したのを今でも覚えている。大掃除をしたあとも、ちょくちょく物を減らして、部屋の掃除をする習慣をつけた。床に物がないから掃除機をかけるのが楽でこれまた感動した。こうやって、私が引っ越しをするまでにはこざっぱりとした部屋ができあがった。

それから数日その部屋で過ごして気付くのだが、案外物がなくても私は生きていける。そしてものが少ないほうが、ストレスが少ないということ。そこから私は一人暮らしへの準備へと入っていく。

いざ、引っ越しのとき。業者の方に驚かれるほど荷物が少なかった。何度も「これで全部ですか」と聞かれた。本当にそれだけで生きていけると思っていた。そのまま引っ越しをし、そして荷ほどきは1時間で終わった。

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今、そんな部屋に住んでいるが、一つだけ声を大にして言っておきたい。私は未だに「整理整頓は苦手」だ。戸棚の中にシンデレラフィットさせる収納なんてことは到底できない。けれど、この部屋は1年間の4分の3くらいはたぶんこざっぱりとしている。それは、とにかく物を減らしているからだ。

冒頭でも伝えたのだが、私は家事があまり得意ではなく、特に整理整頓はめっぽう苦手だ。何度か挑戦したことがあるが、苦手なものはとことん苦手ということがわかったから、別の方向からアプローチしてみた。それが私でいうと「断捨離」だった。

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もしかしたら、苦手な家事と懸命に向き合っている人も少なくないのかもしれない。けれど、私は一度苦手と感じるとなかなか向き合うことができない。だから、そいつとは距離を置いて、斜めからアプローチすることにした。偶然にも目標が「きれいな部屋の維持」だったものだから、整理整頓でも断捨離でもたどり着く場所は同じだったのがよかった。

ということで、私は苦手な家事とは距離を置いて、別の角度からのアプローチをして何とか生活を保っている。きっとそういう人は少なくないだろう。皆さんの苦手へのアプローチもとても気になる。