私の行きつけのお店。
ここでは、仮にI(アイ)と呼びたいと思う。

ちなみに一期一会が店名の由来らしい。
初めて訪れてから、もう5年ほどになるだろうか。

きっかけは、大学時代の親友と食事をしたことだった。
数年ぶりの再会に選んだお店がIだった。

◎          ◎

基本的に、一度行った飲食店を再び訪れることは今までなかった。
入ったときからあった緊張感。
おしゃれ過ぎて自分には場違い。
店長さんも何かチャラそう。
当時は、来るのはこれきりだろうなと思っていた。

でも、それから親友と定期的に会うために訪れるようになった。
親友の職場からすぐの場所だったこともあり、会いやすいからという理由もあった。
もちろん、それだけではない。

料理がリーズナブルで美味しい。
特に、フレンチフライがお気に入り。
カリフワ食感がクセになる。
今でも親友と、必ず一番最初に注文する。
また、店長さんと話すたび、彼がいい人だと思えるようになった。
気づいたら常連になっていて、そのうち一人でも行くようになった。

◎          ◎

前職の会社に入りたての頃、私は同期の友人から「ベルリンの壁」「万里の長城」と言われたことがあった。
分厚くて険しくて、時間をかけて突破しなければならない心の壁。
なかなか周りに心を開かず、近寄りがたい存在だと思われていたらしい。

コミュニケーションがあまり得意ではなかったこともある。

でも、やはり一番は、地元での人間関係がトラウマで、他人を簡単には信じられないのが原因かもしれない。

そんな私だったけれど、親友がいないときでも店長さんとは普通に話せるようになった。
仕事のことをよく話すけれど、個人的なことも結構話している気がする。
今では、冗談を言って笑い合えるほど。

男性は会話の中で少年に戻ってしまうことがあるので、それに同じく店長さんもたまに下ネタを言う。

以前は、他の男性が話しているのを聞いて、私は「汚らわしい」と、あからさまに不快感を示してしまうほどだった。

でも、店長さんが言っているときは何故か「汚い」とは思わなくなった。
きっと、私は心を開いているんだと思う。
店長さんのことを知っていくたびに、温かい人だと感じる。

私にとって、大切な人の一人だと思えるほどになった。
時間をかけて知り合っていくことで、相手のことが分かっていく。
一部分だけで判断してしまうのはダメだと気づくことができた。

Nさん(店長)、最初「チャラそう」「仲良くなれなそう」なんて思っていて、本当にごめんなさい(笑)

◎          ◎

さすがに家にいるみたいにゴロゴロはできないけれど、Iにいるとゆっくり寛げて安心感を覚える。

店内はすごく広いわけでもなく、隣のテーブルときちんと分けられているので、自分の部屋にいるみたいで落ち着く。

IBS(過敏性腸症候群)の症状でお腹が痛くなっても、すぐにお手洗いに行けるので、そういった意味でも安心できる。

他のお店にいるときとは違って、かなりフリーダムな過ごし方をしている。
黙々と数時間、お店の装飾を作って過ごしたこともある。

この前は別のお客さんの子どもがイタズラして壊れてしまった、注文用の小さいハンドベルを私が15~20分かけて直した。

普通のお店だったら、お客さんはこんなことをしないだろう。

色んな意味で、Iは特別なお店。
常連さんやバイトさんとも仲良くなれたし、ここに来るだけで楽しいと思える。
親友のおかげでできた、行きつけのお店。
私にとって、とても大切な場所。
ずっと通えたら嬉しいなと思う。
お店や店長さんとの一期一会を、これからも大事にしていきたい。